2019年9月18日水曜日

厚労省「公的年金の財政検証」を検証してみました(その2)


財政検証について検証してみました。

まず公的年金の現在の状況は、

1 公的年金の被保険者数(社会保険料を支払っている人たち)
 1号(国民年金)被保険者数    1,460万人
 2号(厚生年金)被保険者数      4,430万人
 3号(サラリーマンの妻)被保険者数 840万人
                                       合計 6,730万人

2 基礎年金受給者数(公的年金を貰っている人たち)
  国民年金+厚生年金       合計  3,590万人

3 標準報酬等及び年金の平均額
  ①現役男子の平均的な標準報酬額     43.9万円
  ②現役男子の手取り収入(可処分所得)    35.7万円
  ③厚生年金の標準的な年金受給世帯の年金額 22.0万円
    内訳    報酬比例年金額      9万円
            基礎年金 (夫婦2人分) 13万円(満額)
  ④所得代替率
  ③÷②×100%=22万円÷35.7万円×100%=61.7%

参考
なぜ現役男子だけなのかとお怒りの方もおられるかも知れませんが、社会保険や税制のしくみの大前提は、働く夫(男)と専業主婦(女)の世帯なのです。だからと言って女性に不利益があるのではなく、3号被保険者の保険料が0円(年金は1千万円以上が給付される)になっていますから、保護されている面が多いのです。方や独身世帯については扶養控除がなかったりしますから、不利です。


さて、公的年金制度を長期的に安定させるためには、
収入(保険料)=支出(年金給付)
とする必要があります。

またこの式は、
被保険者数×保険料単価=年金受給者数×年金額
となります。

大雑把なイメージとして、
保険料等40兆円+12兆円(税金+GPIF)=年金47兆円+積立5兆円

現状の数値を代入すると、
保険料等40兆円=6,730万人×60万円(年額)
年金給付47兆円=3,590万人×131万円(年額)
131万円の年金の平均月額は約11万円となります。(推定値)

注意
全体を平均化してしまうとこのような結果となりますが、年金受給者については、未納期間、免除期間などがあり、個々人の受給額には増減があります。

そこで将来を予測する上で重要となる点は、被保険者数と受給者数がどのように増減するのかです。

少子高齢化が言われていますが、出生数と死亡数が今後どのように変化するのか、予測が難しいため、財政検証では数限りない前提と組み合わせを網羅しており、アホなマスコミを尻込みさせるには十分な内容となっています。

でもはっきり言って、スプレッドシートをいくら作ったところで、予測は当たらないので、無理に熟読する必要はないのです。

以下にエッセンスだけご紹介します。

注意
示されたデータについて「これって本当」とか、「絶対正しいの?」とか疑問を持ってはいけません。「ふ~んなるほどね」程度でご理解ください。

まず被保険者数と受給者数がどのように増減するのかの見通しです。

                     川島FP作成

横軸は西暦、縦軸(左)は人数、縦軸(右)は被保険者数と受給者数の比です。

この図より2019年、被保険者数は6,730万人、受給者数は3,590万人からスタートします。

現状として、保険料を支払う被保険者数は年金を貰っている人の1.9倍(右目盛り)居られます。

つまり1.9人が60万円づつ社会保険料を天引きされ、それに税金から15.5万円、GPIFから1.5万円を上乗せし、その年に1人の受給者に131万円を年金として給付していることになります。

注意
社会保険料60万円の中には会社負担分も含まれていますから、サラリーマンの負担はより軽くなっています。

そして将来は、いずれの人口も減少しますが、現役世代の被保険者数が激減し、年金受給者の1.2倍程度になってしまいそうです。

注意
この倍率は、2049年頃から1.2倍で一定となりますが、このあたりが予測の限界で、つまりその先は「よく分かりません。」と読み取るのが正しい見方なのです。

でも将来、現役世代が減り始めたら、待機児童問題は解消されるはずですから、大学までの学費無償化も実現すれば、もしかしたら「産めよ増やせよ!」の世の中となるかも知れませんね。

さて次に、今の若い人たちが将来いくらぐらいの年金が貰えるのか?

                     川島FP作成

このグラフは、それぞれの年代の方が65歳からいくらぐらいの厚生年金(夫婦2人の月額)が貰えそうかを示しています。

例えば、今年30歳の人は65歳から夫婦2人で月額22万円を一生涯貰えるかも知れません。

夫婦共に90歳まで生きるとすると、
22万円×12月×25年=6,600万円

こんなに貰えます。(訂正、貰えるかも知れません。)

注意
繰り返しますが「これ絶対正しいの?」とか聞かないようにお願いします。

現在50歳以上の方は、年々年金額が目減りしそうです。

参考
グラフでは、30歳の人たちは50歳以上の人たちより年金額が多く、それも長期で貰えるので、年金制度は将来改善するかのように見えますが、50歳以上の人たちの標準報酬は、昭和~平成の頃に貰った給与の平均(保険料は少額)なので、所得代替率で見ると、若い人たちよりもお得な世代なのです。


以上財政検証について検証してみました。

この投稿が若い世代の方の年金財政に関するご理解促進にお役に立てるならば幸いです。

その1




2019年9月17日火曜日

厚労省「公的年金の財政検証」を検証してみました(その1)


とは言うものの、100年後を予測しようとする人は、アホか嘘つきか、狂人か占い師のいずれかであることは確かだと思います。

私は投資家としてはっきり申しますが、明日株価が上がるのか下がるのかまったく分かりません。(もっとも興味が無いというのが本音ですが。)

ですから、厚労省の財政検証では「今のままの年金制度が100年持つ。」とは言っていないのです。

厚労省ホームページより
「公的年金制度は長期的な制度であるため、社会・経済の変化を踏まえ、適切な年金数理に基づいて、長期的な年金財政の健全性を定期的に検証することは、公的年金の財政運営にとって不可欠なものです。」

公的年金制度は賦課方式なので、若い世代の支払う社会保険料をその年に高齢者への年金として支払う仕組みとなっており、このバランスをうまく取ることで「長期的な制度」にできるのです。

そのような観点から、5年に一度公的年金制度を点検し、不具合があればそれを国民に公表し、バランスの微調整について国民の理解を得るため財政検証をしているのです。

ですから正しい財政検証の読み方としては、100年先を見るのではなく、5年程度先の年金財政がどうなのかを見れば良いのです。

しかし統計や年金制度を理解しないマスコミなどのアホどもは、年金制度は100年もたないとか、破綻するとか、払い損だとかいろいろ言っていますが、その目的は「話題作り」のために書いているのです。

またそのページには銀行や証券会社、保険屋さんなどの「○○個人年金保険」「○○投資信託」「○○信託」などの商品が並んでおり、広告収入もUPするので、「年金財政の真実」はともかく、国民の不安を煽ることが目的となっており、そうすることが彼らの収入に直結しているのです。

ですから賢い国民は、マスコミなどの意見に惑わされず、公的年金制度を正しく理解しなくてはなりません。

そこでまず公的年金制度の仕組みがどうなっているのかを見てみます。

すでに「国民年金、厚生年金の研究」で年金特別会計について投稿していますが、平成29年度の年金特別会計全体として見ると、保険料等収入約41兆円に対して年金給付額が約47兆円、不足額の穴埋めとして一般会計から11.4兆円、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)から納付金として約0.9兆円が支払われています。

GPIFからの納付金は僅か0.9兆円(年金給付額の約2%)程度ですから、そもそも年金財政への影響をどうのこうの言うほどのことはないのです。


これが年金財政の現状です。

いったいこの仕組みのどこが破綻するのでしょう?

少子化だからと言って保険料を支払う国民がいなくなるのでしょうか?

日本は老人しかいない国になってしまうのでしょうか?

GPIFは博打に負けてすってんてんとなるから、年金が支払われなくなるのでしょうか?

賦課方式よりも、金利が0%の積立方式がよいのでしょうか?

金融や保険のしくみを少しでもかじった人なら、このような意見がいかにばからしいものか、すぐにわかるはずです。

このブログの読者諸氏には、マスコミの偽情報に騙されないよう、この図をじっくりご覧になり、真実がどこにあるのかお考えください。


その2



2019年8月12日月曜日

株式アナリストの厳しい現実


8月7日のロイターに興味深い記事がありましたのでご紹介します。
落日の株式アナリスト、厳しい現実と生き残りの方策

以前、マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆(ひろき・たかし)氏の「相場を予想するということ」をご紹介しましたが、ファンダメンタルズ(基礎的経済指標)を分析し、株価などを予測する仕事の人たちは、もう死にそうなくらい追い詰められているようです。

まあ一般のサラリーマンに比較し高給を貰っている(らしい)ので、それも当然なのかも知れませんが、そうした人たちの現在の苦境をロイターが書いています。

要旨

1 市場予測には政治だけが意味を持つようになった
 2008年の金融危機以来、世界的な低金利が常態化し、株価を動かしているのは、個別企業の業績よりも中央銀行の金融政策(やGPIFの投資政策)となってしまった。

2 困った大統領であるトランプ氏の気まぐれなツイッターにより、株価は大きく変動し、アナリストは言うに及ばず、政治記者たちもまったくお手上げ状態。 

3 政治要因として、中国共産党の経済原則を無視した政策や、イギリスのブレグジットなどは、多分中枢の人間でも明日どうなるのか分かっていないようなので、まして政治に疎い(株式価値は素早く計算出来る)アナリストは「どうなっても俺の責任じゃない」と言いたいところでしょう。

4 株価予測にもとづき投資するアクティブ運用は、その酷い成績が知れ渡り、年々パッシブ運用に押しまくられた結果、運用資金が縮小し、ファンドマネージャーやアナリストはリストラされるか、給料が減らされているかも・・・。

5 そもそも、アナリスト・レポートを信頼し、巨額な投資をしようとするクライアントはいなくなり、レポート自体も山ほどスプレッドシートを付けてはいるが、結論は「将来は過去の延長線上にあるかもね・・・」ってことなので、わざわざレポートにお金を払う気になれないようです。

6 結論として、アナリストの企業や産業に関する高度の知識や分析力は、現在の状況において「無意味」となった。

たぶん7割ぐらいは正しい要約であり、川島FPのいい加減な追記が3割ぐらいとお考えください。

さて、これを読んでいるあなた!
有名な証券会社のアナリストの講演を、高額な授業料を支払って受講していませんか?

ネットを見て「一攫千金」を狙い、株式講座などを受講するか、DVDなどを買っていませんか?

はっきり言って、それらはすべて詐欺です。

そんなに儲かるなら、こっそりと自分だけ儲けていればよいのに、わざわざ手の内を多くの人たちに教えてくれるのは、その情報や手法では儲けられないので、素人を騙して日銭を稼ぐしか方法がないのです。

そこで、オーバーコンフィデンス(自信過剰)の投資家の皆様に是非お伝えしたいことは、チャートにしろファンダメンタルズ分析にしろ、投資の成績にはまったく結びつきませんから、時間の無駄とお考えになられたらいかがですか?

10年ぐらいすると、トランプさんや中国共産党や、ブレグジットなどは消え失せているでしょうから、今年、来年の心配をするよりも、バフェットの言うようにインデックス投信を持ち続けることが、儲けるための最善の策ではないかと私は考えます。




2019年7月8日月曜日

GPIFの2018年度の運用成績は+でした!


GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2018年度運用状況が発表されました。

その結果は、私が予測したとおり(「トータルではとんとんまたは+となるはず」)、2兆3,795億円の+となっています。

3四半期は14.8兆円の巨額な損失を出しましたが、通年では2.4兆円も儲けています。(利回り1.52%)

2018年度末の「市場運用開始後の累積収益額」は+65.8兆円、運用資産額は159兆円、この間の平均利回り3.03%となっています。


2018年度のTOPIXは、2018/4/2の1,708.78ポイントで始まり、2019/3/29の1,591.64で終わっていますから、利回りは-6.86%でした。

しかしGPIFは、米国株式を含む世界的な分散投資により、TOPIXの損失を跳ね返し利回り+1.52%のパフォーマンスを達成しています。

このようにGPIFの投資は長期・分散をメインテーマとして実施されていますから、それを近視眼的にしか見ないマスコミやテレビのコメンテーターは本当にアホしかいないのです。

ですから巨額損失が出るたびに「年金制度の見直しが必要だ。」とか言っていますが、そもそもこのアホたちは「年金制度」に関してまったく理解していません。

それに投資では100戦100勝はあり得ないのですから、GPIFの評価は取っているリスクに対するリターンが適切かどうかで見るべきなのです。

一方GPIFについては、良質な人材を確保するため高級を支払ったり、官僚の天下り先を提供したりと問題が無いわけではありませんが、現状の運用状況を見る限りは「good job」と言って良いのではないでしょうか。

いずれにしても、GPIFは159兆円もの巨額な年金積立金を運用しているため、官僚や族議員は虎視眈々と「おこぼれ」を狙っています。

この投稿にも書きましたが、グリーンピアのような事業を監視しなくてはなりませんし、また国民は年金制度を良く理解し、その運用状況を注視し続けなければならないのです。

マスコミの役割は本来はそこにあるはずなのですが、入り口となる金融についての理解が乏しく、上っ面を撫でるような記事しか書けないようです。

したがって、このブログの読者諸氏は新聞テレビの報道内容を信頼せず、「なにが本当なのか?」をご自分の頭で考え、できれば1次ソース(今回はGPIFの運用状況)などを調べてみてください。