2019年4月15日月曜日

ニッセイ「ロングドリームGOLD3」の分析と評価


ニッセイは、2019年4月より「ロングドリームGOLD3」を全国の銀行等の窓口で発売しました。

「GOLD2」の発売からまだ半年しかたっていません。
ニッセイは何を考えているのでしょう?

私にはまったく分かりませんが、多分言っていること(パンフレットに書いてあること)と本音はずいぶんと違っていそうな気がします。

本来マーケティングとは、100%お客様に対して行われるはずですが、「ロングドリームGOLD」シリーズに関して、ニッセイは100%金融庁のご意向に合わせたように思えます。

注意
金融庁のご意向とは、「Fiduciary duty(受託者責任)を果たせ!」、つまり「お客様を騙して稼ぐようなことは止めなさい!」と指導しているのです。

この指導に合わせニッセイが渋々実施したのが「積立利率と実質利回りの差をなくした。」ことです。

「ロングドリームGOLD2」では7%の初期費用を無くしましたが、今回は「GOLD」「GOLD2」「GOLD3」すべてについて初期費用をなくし、積立利率も統一しています。

参考
積立利率と実質利回りの差を小さくした結果は次のとおりです。
2018年10月時点(米ドル)
「ロングドリームGOLD」
       積立利率3.46%>米長期金利3.08%
         実質利回り2.71%
「ロングドリームGOLD2」
       積立利率2.74%<米長期金利3.08%
         実質利回り2.7%
2019年4月時点(米ドル)
「GOLD」「GOLD2」「GOLD3」共通
    積立利率2.3%≒<米長期金利2.5%
          実質利回り
              「ロングドリームGOLD」約2.3%(為替は一定)
              「ロングドリームGOLD3」約0%(元本部分の利回り) 後述

参考
「ロングドリームGOLD(複利でふやす)」と「ロングドリームGOLD3(うけとる)」の違い
ふやすタイプとうけとるタイプいずれも積立利率は2.3%で共通です。
1時払い1,000万円と仮定すると、
○利回り2.3%の複利で10年間ふやした場合
 1.023^10年=1.255=もどし率125.5%(為替は一定として)
○利回り2.3%で定期支払金(年金)を受け取った場合
 毎年の受取額 23万円(元本は常に1,000万円一定とします。)
  10年間の合計額 230万円=戻し率123%(理論値)
注意
毎年の受取額は、「うけとるタイプにおける積立利率から定期支払金額を円で一定額とするための会社所定の率を差引いた率(円建定期支払率)により定期支払金額を計算します。」と記されており、各種ヘッジコスト及び税金、手数料等が差し引かれるため、実質的な利回りは2.3%をかなり下回るものと考えられます。たぶん年金額は15万円以下なのでは・・・

参考
債券タイプ(外債)の投資信託では、この1年間の実質平均リターン(契約者が得られた利益)は4.45%もあります。株式が低調だった分債券が買われた(債券価格は値上がりした)ため、すこぶる良い状況となっています。この間米国長期金利は3%前後でしたから超過利回りは1.5%程度もあります。この4.45%に比べて「ロングドリームGOLD(複利でふやす)」の利回り2.3%は信じられないぐらい低すぎる値と言えます。(ニッセイの債券運用(外債)では多分4%ぐらいのリターンがあったはずですが、保険ではベラボーに高い手数料や管理費をぼったくっているため、このように契約者に約束する利回りは低くなってしまうのです。)


さて寄り道から元に戻して、
いずれにしても、初期費用をなくし、積立利率を低下させたのは、金融庁の指導により「誇大広告(利回りの誇張)」を是正しただけなので、お客様サイドの実質的な利回りには特段の変化はありません。

元々の実質利回りはその程度だったのです。


さてそこで「ロングドリームGOLD3」は何を狙って発売されたのか?

ニッセイは転んでも(金融庁に屈しても)、ただでは起きません。
もちろん悪巧みはしっかりとあります。

ポイントは「定期支払金(毎年分配型)」です。

「ロングドリームGOLD3」では、毎分配型ではなく「毎分配型(定期支払金)」を選択できるようになりました。(ニッセイ調べによると「業界初」だそうです。)

私の意見
保険で「毎月分配型」をやっても投資信託の「毎月分配型」に勝てるわけはないので、だれもやらなかっただけというのが正しい判断であると私は考えます。また保険の配当は積み立てるか、保険料の割引きに使うのがまっとうなやり方であり、定期支払金などというばかなやり方は端から選択支になかったのです。

投資信託の毎月分配型について、日経記事によると、昨年は「毎月決算型(毎月分配型)ファンド」からの資金流出が一段と進んだそうです。

毎月分配投信、支払いの9割元本取り崩し

投資信託では、ファンドが稼いだ「利益」を毎月分配してくれていれば何の問題もないのですが、実態は9割のファンドで「利益」が出ていないため、元本を取り崩して「分配金の原資(特別分配金)」に充てていたというのです。

いわゆる「たこ足配当」です。(タコが自分の足を食べて栄養にしても、体は大きくならない。じり貧状態)

この状態は2011年頃から始まっていたようですが、販売手数料が良いため、銀行や証券会社などが「年金で足らない分を投資信託からの毎月の配当金で埋められますよ。」とか言って老人を騙して大量に販売していました。(ですから金融庁が目くじら立てて怒ったのです。)

そして金融庁の指導も是有り、また「たこ足配当」も知れ渡り、やっと昨年あたりから堰を切ったように資金の流出が始まりました。

でも「毎月分配型」のニーズは潜在的に大きなものがあります。

そこでニッセイは投資信託の「毎月分配型」を解約したお客をターゲットに、保険の「毎年分配型」で釣ろうと考えた・・・のかも知れません。

でもね、複利を重視すべき長期投資において「毎月分配型」がいかに非効率であるかは既に明らかとなっています。(ですから金○庁は「売るな!」と言っているのです。)

ましてや投資信託に比べて、とんでもなく非効率な保険が「毎年分配型」を売ろうなんて、私に言わせれば「狂気の沙汰」です。

金融庁が目くじら立てていた投資信託の「毎月分配型」の方がまだましと言えます。

参考
「毎月分配型」ではお金が増えない理由
1 資産を毎月取り崩すため、運用の大原則「複利効果」が働かない。
2 分配金の支払いのため、保有資産を売却し、その都度税金の支払いがある。
3 利益がないときでも分配金を支払うため、元本の取り崩しが常態化しやすい。

参考
保険に比べて投資信託が優れている理由
1 買付手数料 保険は約10%、投資信託は0%
2 信託報酬  保険は1.5%、投資信託は0.5%
3 解約手数料 保険は6%、投資信託は0%
注 死亡保障は保険のメリットですが、解約返戻金程度では投資信託との差はなし。
    保険の唯一のメリットは、非課税財産として(500万円×法定相続人の数)が控除できることだけです。

蛇足
外貨投資において、金利変動と為替変動が主要なリスクとなりますが、円で毎年一定額の配当金を支払うためには、当然この2つのリスクをヘッジしなくてはならず、そのためには多大のコストがかかります。しかも多大のコストをかけた結果として、理論的な利回りは円貨で運用した場合と同程度になってしまうのです。
(ジェレミー・シーゲルは「株式投資(Stocks for the Long Run)」の中で、長期投資において「為替ヘッジは必要なく、ときとして不利益をもたらす。長期投資で為替リスクのヘッジは自滅行為」と書いています。)


とはいうものの、契約者が年金のような感覚で配当金を円で受け取りたいという希望は十分理解できます。(そこがニッセイの狙いなのです。)

しかしリスクヘッジの仕組みを知れば世の中そんなに甘くはなく、「定期支払金」はとてもとても損な選択となります。


以上よりこの損な選択となる「定期支払金」を目玉としている「ロングドリームGOLD3」はろくでもない商品であるというのが私の結論です。



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