「為替の変動が恐いので為替ヘッジのある外貨建商品にしたい。」とのご要望をよく聞きます。
しかし為替のリスクを取らずに外貨建商品の高利回りだけを得ることはできません。
外貨建商品に為替ヘッジを付けた場合、国内投資(預金)とまったく同じ利回りとなってしまうからです。
したがって「何のためにわざわざ為替手数料やヘッジコストを掛けて、国内商品と同じ利回りの外貨建商品に投資するの?」ということになってしまいます。
なぜそうなるのかは次のとおりです。
日本の金利が1%、オーストラリアの金利が5%とします。
もし為替レートが1豪ドル100円で将来も変わらない(固定相場)とすると、
元本100万円の3年定期として具体的な計算をしてみます。
日本国内 100万円×1.03=103万円
オーストラリア国内 1万豪ドル×1.16=11600豪ドル(116万円)
3年後には13万円もの差となってしまいます。(為替手数料は無視)
これでは、日本国民全員が豪ドルの外貨預金をするのではないでしょうか。
わずか1%程度の金利の国内の銀行に預金する人がいなくなってしまいます。
そこで、日豪の金利差を無くすよう裁定取引が行われることになります。
為替レートが変動する場合、為替ヘッジがどのように行われるかは次のとおりです。
為替ヘッジを行うには、将来外貨を円に換えるときに一定のレートで換えることを預金または投資する時点で決めてしまいます。
前記の例では、為替ヘッジをするということは、豪ドルの先物を買う(デリバティブ)ことで行われます。
通常先物は1年ですから、1年後の日豪の元利はつぎのとおりとなっています。
日本国内 100万円×1.01=101万円
オーストラリア国内 1万豪ドル×1.05=10500豪ドル
ここで、1年後の豪ドルの先物レートはつぎの計算式で決まります。
10500豪ドル×(豪ドルの先物レート)=101万円
したがって、
豪ドルの先物レート = 101万円 ÷10500豪ドル=96.19円
この結果、1年後の元利は
日本国内 100万円×1.01=101万円
オーストラリア国内 1万豪ドル×1.05=10500豪ドル
円換算額 10500豪ドル×96.19円=101万円
円換算したときには外貨投資した場合も、国内の元利101万円と同じくなってしまいます。
つまり、豪ドルの先物レートは、日本国内の金利に相当するように決まるのです。
この結果、豪ドルに投資する意味がまったくなくなってしまいます。
結局リスクのないところにリターンはないのです。
投資信託の具体例として「野村豪州債券ファンド」で見てみます。(上記のグラフ参照)
Aコースは(為替ヘッジあり)、Bコースは(為替ヘッジなし)です。(同社運用報告書より抜粋)
2003年9月以来のデータです。
図からAコース(為替ヘッジあり)は、基準価額が水面下(1万円以下)に沈みっぱなしです。
一方Bコース(為替ヘッジなし)は基準価額の上昇に目覚ましいものがあります。
2008年9月にリーマンショックがあり、Bコースは7000円も基準価額が低下しましたが、1万円を割ることもなく、持ち前の高利回りによりこの2年間に取り返しています。
Bコースは設定以来4年で1.7倍になっていますから、利回りは約15%ぐらいと見積もられます。
豪ドルはリーマンショックにより為替が約半値にまでたたき売られましたが、利回りが約15%もあると100年に一度の金融危機にも十分に対抗できることがわかります。(実質的なオーストラリア経済への影響が少なかったため。)
この間Bコースは分配金が3,763円(利回り約5.8%)もあり、一方Aコースは149円(利回り約0.23%)でした。
利回り0.23%は国内の預金金利と同等ですから、まあまあだと思いますが、Bコースの25分の1ですから大変見劣りがします。
さてあなたならAコースにしますか、Bコースにしますか?
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