2011年4月6日水曜日

流動性こそが最大のリスク


(図をクリック&クリックすると拡大します。)


2008年、米国の住宅バブル崩壊により巨大企業であるAIGが破綻の危機に陥りました。

AIGは住宅ローン担保証券(MBS)などを100兆円保有していたと言われており、それらの資産の買い手が瞬時にいなくなってしまったため、時価会計としては帳簿価格が0円となってしまったからです。

一方バブルが崩壊したとは言え、住宅ローンのすべてが返済困難となった訳ではなく、そのごく一部の人たちが返済できないだけで、大半の人たちは堅実に返済を続けていました。

そのため普通に考えれば、住宅ローン担保証券の利回りは低下するものの価値がなくなったわけではないのです。

しかし今まで確実に儲かると考えられ流通していた住宅ローン担保証券が一夜にして信用市場崩壊により買い手がまったくいなくなってしまい、その結果巨大企業AIGの危機に至ったのです。

さて「市場」は何のためにあるのでしょうか。

株式などは東京証券取引所(東証)において売買されています。
東証がないと株式などは相対取引となり、株式保有者は自分で買い手を探さなければなりません。

つまり、「市場」とは買い手を集める場所と言うことができます。
市場において最も大切なことは買い手がいるということです。

ときに市場が一方に傾き、買い手がいなくなってしまう場合があります。
これは市場の厚さが足りない(参加者が少ない)からです。

住宅ローン担保証券は市場が薄かったのです。
別の言い方をすると住宅ローン担保証券の価値を判断できる参加者が少なかったと言えます。(CDSなどは作った者にしか価格が計算できないものがあります。)

今、世界市場ではたいへんなスピードで巨額な投機マネーが動いています。
その結果として国内・国外株式などの相関が強まるなど、あらゆる市場の関連性が強くなって来ています。

つまりは、儲かるところに瞬時に投機マネーが動くようになって来ているのです。

では投機マネーの規模はどのくらいなのでしょう。

上の図に「世界各国のGDP」と「投資マネーの資産規模」「投資先別の投資規模」を示しています。(週刊ダイヤモンドから数値を借用させていただきました。)

この表から、富裕層や年金基金の運用額は米国のGDPの2倍を超えています。

ヘッジファンドでさえ、その運用額はブラジル、インド、ロシアなどのGDPを超えています。
レバレッジを掛ければ先進国のGDPも超えることが出来るでしょう。

実際、英国で「1992年のポンド危機」が起こっています。

ヘッジファンドの雄ジョージ・ソロスはイングランド銀行(中央銀行)を相手に1兆円ものポンドを売り浴びせ、ポンドの価値を40%も下落させ、その結果ついに英国は欧州通貨制度から撤退せざるを得なくなりました。

ヘッジファンドが国家に勝ったのです。
今では先進国でさえも投機マネーの標的となったのです。

同様な例では「1997年のアジア通貨危機」があります。

タイのバーツなどを標的に、米国のヘッジファンドを主とした機関投資家が通貨の空売りを仕掛けたことでアジア各国通貨が暴落し、タイ、インドネシア、韓国はその経済に大きな打撃を受けました。

市場(国のGDP)が小さいと投機マネーの標的となるか一瞬で買い手がいなくなってしまう危険性があります。

投機マネーの標的としては当面「日本国債」の空売りが最も可能性が高いと言われています。(日本国債は国内で大半が流通していますが、その買い手もだんだんと居なくなっています。)

通貨については、当面高金利通貨に人気が集まっていますが、いずれの国もGDPが小さく、税制(政策)や紛争などのカントリーリスク次第で一瞬で投機マネーが逃げ出しますから、逃げ足の遅い投資信託などでは通貨選択型で弱小通貨を選ばない用心が必要です。

カントリーリスクの他に、先進国の金利上昇によっても、投機マネーが高金利通貨から逃げ出す可能性があります。

図3の「投資先別の投資規模」から分かることは、先進国市場が最も厚いと言うことです。

通貨なら米ドル、株式・債券なら先進国に分散投資をしていれば、どんな場合においても買い手がいなくなる可能性は限りなく低いのです。

投機マネーのお先棒を担ぐか、毎日安心して眠りにつくのかはあなた次第なのですが、FPとしてのアドバイスは万が一の時に売れなくなるものは買わない方がよいと言うことです。


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