2020年6月11日木曜日

ドルコスト平均法の効果とは?


ドルコスト平均法を正しく理解していただくためにその効果を具体的に研究してみました。

研究の対象として、TOPIX(東証株価指数)の2010/1/4~2019/12/27の10年間の日次データを使用しています。

この間のTOPIXの推移状況はグラフのとおりです。


参考
2010/1/4のTOPIX株価指数は、915.75
2019/12/27のTOPIX株価指数は、1,733.18
この間の平均利回りは6.59%

概観
2008/9/15 リーマンショック
2009/9/16 民主党政権発足
2012/12/26 第二次安倍内閣発足(これ以降の平均利回り10.8%)


前提として月額5万円、年額60万円を投資元本として積み立て、この10年間にTOPIXに連動するインデックスファンドを購入し続けたとします。(投資合計額600万円)

ちなみにこの期間の最初2010/1/4に600万円をまとめてTOPIXのインデックスファンドに投資すると、2019/12/27には1,136万円(約1.89倍)になっています。

平均利回りが6.59%ありますから、なるべく早い時期に投資する方がたくさん儲かります。

しかし2018年1月(TOPIX 1,911)にまとめて投資してしまうと、2019年末までの平均利回りは-9.3%になってしまいます。(いわゆる高値づかみ)

参考
このグラフでは、直線より下側の値段で買えれば割安となり、上側の値段で買えば割高となります。


1年単位の分散投資による効果

さて分散投資の方法として、年初に60万円を投資する場合と、年末に60万円を投資する場合を比較してみます。

毎年1月初旬に60万円を投資すると、2019年末の元本は901.6万円(約1.5倍)になります。

毎年12月末に60万円を投資すると、2019年末の元本は864万円(約1.44倍)になります。

その差は37.6万円にもなります。

年初の60万円は平均すると利回り6.59%で増えますから、年末には63.95万円となり、これが10年間となると、37.6万円の差となるのです。(各年で一定割合で増えるわけではありませんが、平均すると利回り6.59%で増えます。)

では年央(7月初め)に投資する場合を考えて見ます。

この場合2019年末の元本は893.6万円となり、年初に投資するタイプに比べ-8万円、年末に投資するタイプに比べ+29.7万円となっています。

年初投資901.6万円>年央投資893.6万円>年末投資864万円

一年の真ん中で投資したのに、8万円と29.7万円の違いがありますが、この原因は年前半の平均利回りが1.6%に対して年後半の平均利回りが5.2%と高かったためです。

なぜ年後半の平均利回りが高かったのかは不明ですが、「Sell in May and go away(5月に売り逃げろ)」などの格言による影響かも知れません。

さて以上の分析はドルコスト平均法とは関係なさそうですが、時間差による利回り効果を確認するとともに、比較の対象として最初に抑えておきました。


毎月投資するときの効果(ドルコスト平均法の儲かり効果)

ではドルコスト平均法により、毎月5万円を10年間積み立てた場合を考えます。

月初に5万円を積み立てた場合、2019年末の元本は892万円(約1.49倍)になります。

これは年初に60万円を投資する場合よりも-9.3万円の損となります。

年末に60万円を投資する場合よりも28万円儲かります。

そして年央に60万円を投資する場合よりも-13,485円の損となります。

この原因は、年後半の利回りが良いので、7月から12月の6ヶ月分をまとめて年央に前倒し投資する方が少し儲かるのです。

ちなみに月初ではなく月末に5万円を投資した場合、2019年末の元本は888万円(約1.48倍)となり、月初投資にくらべ-4.3万円の損となります。

この理由は、1ヶ月早く投資することで、この間僅かですが利回りを稼げ、そしてその僅かな利益は120ヶ月分蓄積されるので、この差が生まれるのです。

参考
この10年間の全営業日(2448日)において、毎日2,451円(年60万円)を投資した場合、2019年末の元本は892万円になります。これは月初に5万円を積み立てた場合とほぼ同額(毎日投資の場合が-3,220円の損)となります。

参考
定量購入法との比較については次回詳述します。


以上の分析では手数料を無視していますから、現実的には投資回数が多くなると手数料は増加し、その分利回りは低下します。

ここまでの結論として、ドルコスト平均法にしたからと言って儲かるわけではありません。儲けるためにはまとまったお金をなるべく早期に投資することです。


ドルコスト平均法に効果はないのか?

バートン・マルキールは「ウォール街のランダム・ウォーカー」の中で、ドルコスト平均法とは「間違ったタイミングで株式や債券に有り金すべてをつぎ込む愚から身を守る投資方法である。」と書いています。

またウォーレン・バフェットは「ハンバーガーは値が高いときには買わず、安い時に買う人が、株式については値が上がっているときに買い、値下がりしているときに売っている。それはまったく馬鹿げた行為である。この間違いを犯さないためにもドルコスト平均法にはメリットがある。」

そこで読者諸氏がもっとも悩む点が、「手持ち資金はなるべく早く投資したほうが儲かるのに、コツコツと毎月投資していると損になるのでは?」

その疑問はまったくそのとおりで、投資家として悩ましいところです。

そこで川島FPのアドバイスは以下のとおりです。

 まとまった投資資金があり、5年先を見通しても、そのお金を必要としない(解約しない)という確たる自信がある人は、一発ドカンと投資しても良いでしょう。ただしTOPIXなどのインデックスファンド(ETF)限定です。個別株式はリスクが高いので厳禁です。

 一発ドカンと投資する勇気の無い人、後悔したくない人は、利益を気にせず、地道にコツコツと一定額でETFを買い続けることをおすすめします。(この方法はストレスが少なく、毎日安らかに眠れますから、私はこちらをおすすめします。) 


銀行や証券会社では、「ドルコスト平均法によりリスクが下がる」と説明される場合がありますが、山崎元氏は「どのような買い方をしたとしても、同じ対象を買う限り、それぞれの時点のリスク・リターンについて有利不利はない。」と述べています。

つまりAという株式を、まとめ買いしても、小口買いしても、A株の本質的なリスクは「同じ」と言っています。

参考
リスクは一般的に価額変動の標準偏差σで定量化されます。したがってA株を1万株持っていても、1株持っていても、いずれの場合も、標準偏差(リスク)σは同じになります。

したがってドルコスト平均法の効果として、投資対象のリスクは減らしてくれませんが、投資家側の「後悔するリスク」は減らしてくれる効果が大きいと言えます。

どんなプロでも投資のタイミングをピタリと当てることはできません。

いつ買っても、いつ売っても必ず後悔しますから、目をぎらつかせて画面にグギ付けされているより、知らない間にコツコツ買い続ければ、10年後20年後には大きな幸せがやってきます。

私はドルコスト平均法を皆様におすすめします。