2010年5月14日金曜日
変額年金の市場価格調整率(その1)
(グラフはクリックすると拡大します。)
2014/6/16グラフを修正
変額年金保険では、中途解約時のリスクとして「市場価格調整率」があります。
保険の営業はこのリスクについて、契約者に説明しなければなりませんが、ほとんどの営業はこれを理解していません。
せいぜい「金利が上がれば、価格が下がり、元本割れするかもしれません。」程度です。
この程度では、中途解約のリスクが3~4%なのか、それとも30~40%なのかで、契約しようとするとき、判断がまったく違ってしまうのではないでしょうか。
現状では、このリスクの程度を売る方も買う方も理解していないのが変額年金保険の実態なのです。
そのため、いざ解約という時に返戻金の少なさにびっくりしてしまうことが多いのです。
市場価格調整率を、債券価格と利回りを例に説明します。
図1は、10年もの割引国債の価格の推移を例に示しています。
国債の価格は、入札により決まりますが、このとき同時に金利も決まります。
と言うより、むしろ国債価格は、そのときどきの金利情勢を反映した価格で落札されると言ったほうが正しいと思います。
図の薄いオレンジ色の線は、金利2%のときの国債価格の推移状況を示しています。
経過年数により価格が上がり、満期には額面で償還されます。
この国債を途中で売却する場合の価格はいくらでしょう?
このときにも、国債価格は「その時点の金利」により決定されます。
金利2%の新発債を購入後、3年で売却するとき、そのときの金利が4%なら、2%の線から4%の線上へ価格は下落します。(赤の矢印)
なぜなら、金利が4%の国債(経過が3年のもの)が76円で売られているときに、金利2%の国債を87円で買う人はいないからです。
したがって、金利2%で購入した国債を3年後に売ろうとしたら、その時点の金利4%の国債と同額の76円でしか売れないということです。
この金利上昇による国債価格の下落が、3年分の金利を帳消しにし、元本割れとなってしまいます。
逆に新発債が6%だった場合、4年後に金利が4%に低下していたら、国債価格は6%の線から4%の線へ上昇していますから、6%の利回りに加え債券価格の上昇分が儲かることになります。(紫色の矢印)
国債は固定金利だから、中途換金も当初の利回り線路(図1の色分けされた線)のとおり、購入時の利回りで増えていると思ったら大間違いで、世の中の金利が変わるたびに、利回り線路がどんどん切り替わっていくのです。
それも残存期間が長いものほど、少しの金利の変化で価格は大きく上下することになります。
以上が国債価格と金利の関係です。
債券に投資している変額年金の場合、中途解約するときには、解約時の金利により債券価格が変化しており、これを解約返戻金に反映させているのが「市場価格調整率」です。
現状では異常な低金利なので国債などの価格が高止まり状態ですから、変額年金保険の「止め時」かも知れません。
金利が上昇してきたときに解約しようとすると、もともとの変額年金保険の利回りが1%程度ですから、利回りで増えた分は金利上昇(債券価格の下落)でふっとんでしまうことになります。
変額年金保険は「金利」に敏感だと覚えておいてください。
参考
個人年金保険契約者に迫り来る市場価格調整率の恐怖
変額年金の市場価格調整率(その2)
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