2020年3月2日月曜日

日米金利差と為替の関係は今どうなっているのか?


 為替が大荒れしています。

昨年9月以来、為替は無風状態でしたが、「武漢肺炎」のため日米共に経済への影響が懸念されるに至り、また双方の金融当局の対応の違いにより急激に為替が動きました。

為替は年初来、2月18日までの間108.36~110.14円(値幅1.78円)を微動していましたが、「武漢肺炎」がやばそうだとなった2月18日から20日のたった2日で2.25円下落(円安)し、その後の1週間で112.11円から108.07円に4.04円上昇(円高)しています。

2.25円の円安の原因は、日本経済への影響が深刻だとの懸念から円が売られ、その後FRB(連邦準備制度理事会)の動きとして、追加の利下げの可能性が示唆されたため、日米金利差の縮小予測から円が買い戻され、4.04円の円高となりました。

意見
FRBのクイックレスポンスに対して日銀の官僚体制の違いにより4円も円高となりました。黒田総裁が緊急会見を開くだけでも円高は2円程度に抑えられたのでは・・・と思いますがいかがでしょうか?

参考
2018年2月16日に1ドル=105円の円高となったときには、財務省、日銀、金融庁による緊急会合が開かれています。

参考
3月2日午前10時前、日銀総裁が “市場に対し潤沢な資金供給に乗り出す”と談話を発表。
FRBより3日遅れです。


私は「円」が安全通貨というアホなマスコミの見解には与していません。

参考
「武漢肺炎(ジャパンリスク)」のため円が売られ、FRBが利下げ(金利差縮小)しそうだから円が買われたのですから、円が安全通貨という論理はどこにもありません。

今回の円高の原因は明らかに「日米金利差縮小の予測」であり、その背景としてベーシススワップスプレッドの拡大もありそうです。

「ベーシススワップスプレッド」についてはこちらを参照。

以前の投稿「米国債の利回りとドル円レートの関係は今どうなっているのか?」で日米金利差と為替レートの相関を分析しています。

この投稿の結論として、ほとんどの期間では日米金利差と為替レートは正の相関を示しており、ときどきの日米金融当局の政策の違いにより、たまに負の相関を示しました。

参考
正の相関とは、日米金利差が上昇(右肩上がり)すると、為替も円安(右肩上がり)となります。負の相関の場合は、金利差が上昇しても為替は円高(右肩下がり)となります。


このグラフは、日米金利差と為替レートの相関を表しています。

参考
相関はグラデーションの青い線で表しており、赤い線が相関が0です。この0レベルを挟み±1の範囲の折れ線として相関のグラフを示しています。

グラフより、相関のグラフは2018年1月、2月に-0.85となり、日米金利差と為替レートが通常と異なる(反対の)動きとなっています。

この原因として、

①前月12月のFOMCにおいて、2018年は2017年に続き3回の利上げが決定されていた。
 このときの市場は、利上げによる景気減速を懸念していた。

②米国の長期金利は、2017年を通じて2%前半で安定していたものが、2018年1月に2.72%に急上昇した。

③2018年1月にトランプ大統領が「大規模なインフラ投資」などを表明し、米国経済の過熱感や、米国の財政赤字が膨らむことへの懸念が高まった。

この結果として、米国経済の減速とドル紙幣のバラマキが懸念されたため、急激な「円」買いが進んだと分析されています。

一方私の見立てとしては、この時期のベーシススワップスプレッドが100bp(basis point)もあったため、海外投資家はドルと円をスワップし、日本国債に投資することで、米国10年債を遙かに上回るリターンが得られたことが主因と考えています。


 (このグラフは財務省資料「日本国債市場における海外投資家の動向」よりパクりました。)

さてこの2月も日米金利差と為替が1年5ヶ月ぶりに負の相関(-0.36)となりました。

原因は、前記のとおりですが、この1年間のデータを詳細に見てみます。


FRBは7月以来3回の利下げを行っています。

これに引きづられ、日本の長期金利も8月29日に-0.286まで低下しました。

この状況から国内の銀行などは悲鳴を上げて日銀に泣きついています。

泣きつかれた日銀も、買うべき国債がもう無くなってしまいましたから、80兆円の国債購入は棚上げし、今度は「長期金利0%誘導だ!」と政策を変更しています。

以来、米国の長期金利と日本の長期金利はデカップリング状態となり、12月10日にはめでたく長期金利は0%を達成しています。

長期金利0%達成を喜んだのは銀行であり、住宅ローンを借りる国民は泣きました。

この1年間の金利差と為替レートの推移状況は次のグラフのとおりです。


金利差と為替レートの相関は、
1月-3月 -0.22(金利差縮小 → 円安)
4月-8月  0.96(金利差縮小 → 円高)
9月-2月  -0.37(金利差縮小 → 円安)

このグラフより、9月以来為替は円安に振れすぎていたようです。

通常金利差と為替は正の相関となるはずですから、本来の為替レートは107円ぐらいに落ち着くのが適切なように思います。

それにしても2月20日の112.11円から28日の108.07円への円急騰は、金融当局の失態ではないでしょうか。

日銀はもっとFRBの動きをよく観察し、適切に対応して貰いたいものです。



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