2019年10月28日月曜日

儲けさせてくれる金融機関はどこ?


金融庁が儲けさせてくれそうな金融機関とだめな金融機関を実名で公表しました。

平成31年1月29日金融庁
販売会社における比較可能な共通KPIの傾向分析

参考
KPI(Key Performance Indicator)
一般に企業経営で使用される指標で、具体的な業務の目標設定などの目安として使われる数値のことで、金融庁では「運用損益別顧客比率」を共通KPIとしています。
運用損益別顧客比率とは、金融機関から投資信託などを買った顧客が、儲けているのか、損をしているのかの割合を示す数値です。

金融庁の強力な指導のもと、103社の金融機関がしぶしぶKPIを公表しています。

金融庁によると、公表対象事業者数は1561社もありますが、強力な指導にもかかわらずKPIを公表した会社はわずか103社。これは全体の6.6%にしかなりません。

つまり残りの93.4%の会社は、自分たちの悪行(顧客に損をさせて自分たちだけが儲けていること)がバレるのが怖くて、KPIの公表を渋っているのかも知れません。

日本証券経済研究所の「考察」によると、金融庁の共通KPIは「損益率計算対象から全売却銘柄が除外されている」とか「営業姿勢への悪影響が懸念される」とか、「計算式がいいかげん」とか、あ~だこ~だといちゃもんを付けていますが、いずれにしろ金融機関側に立った「考察」ですから、個人投資家としてはスルーするのが適当かと思います。

参考
日本証券経済研究所「投信販売の共通KPIに関する考察

この考察が馬鹿げている点は、「なぜ私はプラス領域ではないのか」という問いに適切に答えること(つまり言い訳を考えること)ではなく、KPIを90%に引き上げる方法を真剣に考えろと指摘していない点です。


それでは、
まずKPIを公表した96社について、金融庁が集計したグラフは次のとおりです。



グラフの読み方
横軸は利益率であり、たとえば右から2番目の柱状グラフでは、利益率が30%~50%も儲けた人が7.7%いたことになります。

このグラフから分かることは、投資信託などを購入した顧客の46%が「損をしていた。」と言う事実です。

さて損をした人たちが46%もいたことは果たして妥当なのか?
「世の中そんなもんですよ!」と言っていられるのか?

そこで96社の平均ではなく、業種別に細分化したグラフが次です。


このグラフより、
驚くことに、同じ時期において「投信会社」では顧客の91%が儲けていたのです。損した顧客は僅か9%しかいません。

参考
グラフ中のIFAとは、独立系ファイナンシャルアドバイザーのことであり、公表は1件のみです。

同じ相場環境において、方や顧客の91%が儲けさせていただいた会社があり、方や顧客の46%が損している状況とは、なんかおかしい気がするのは私だけではないでしょう。

はっきり言って、明らかに顧客に損をさせて儲けている金融機関がありそうです。

とは言うものの、公表した投信会社は、コモンズ投信、レオス・キャピタルワークス、セゾン投信の3社のみですから、それ以外の投信会社は、世の中に公表できないような「とてもひどい成績」かも知れません。(成績優秀な会社だけが公表していると考えられます。)

参考
コモンズ投信            KPI 98%
レオス・キャピタルワークス   KPI 91%
セゾン投信                             KPI 85%

注意
この投信3社ではいつでもKPIが90%超になる訳ではありません。リーマンショック後のように投資環境が悪ければ当然KPIが0%になる可能性もあります。したがってKPIは相対的に、つまり同時期で比較して、高い数値なら「優秀」な金融機関であり、低い数値なら「劣等」な金融機関であると言えます。

成績優秀な投信3社の91%に対して、銀行等の成績53~59%はあまりに低く、首を傾げざるを得ません。

この成績では「赤点」まちがいなしです。(たぶん金融庁は「赤点」だと考えているのでは・・・)

このグラフについて分析してみると、勧誘も面談もなく、投資家が勝手に自己判断して投資しているネット系証券の成績が61%ですから、主要行等の59%との差は思ったほど大きくはありません。

と言うことは、銀行が顧客を騙して手数料稼ぎをしているとは言えない面もあります。

いずれにしても投資成績がよろしくない原因の一つとして考えられるのは、個人投資家は「それほど賢くない」のかも知れません。

参考
そこで証券各社は生き残りを賭けてコンサルティング営業に取り組み始めています。
世の中いよいよIFAの出番なのかな・・・?(でも投資信託や保険を売っているIFAは信用してはいけません。)

個人投資家は賢くないのかも知れませんが、61-59=2%の差はありますから、悪意を持った利益誘導が金融機関側で行われている可能性は十分にありそうです。

したがって銀行の窓口では、顧客がもっと儲けられる商品を教えてあげることができそうな気がしますが、いかがでしょうか?

たぶん、金融庁はKPIに対するいちゃもんの「考察」ではなく、「成績向上のための考察」を期待しているのではないでしょうか。

銀行等の成績が赤点なら、(対面)証券の成績は劣等生であり、いかに顧客を騙して回転売買をさせ、損失を出させているのかが明瞭に読み取れます。

つまり顧客は生かさず殺さずのちょうど真ん中の50%になるように管理しているようですから、このプロの腕はみごとです。(と言うよりあきれたものです。)

最後に「販売会社における比較可能な共通KPIの傾向分析(31.1.29)」より、「個社ごとの運用損益別顧客比率」の一覧表を掲載しますので、投資信託の購入先を選ぶ際の参考にしてください。

注意
KPIを公表する会社数は増加しており、また公表済みの各社もKPIを更新していますので、金融機関を選ばれる際は、各社HPあるいは金融庁HPより最新データをご確認ねがいます。

(金融庁公表データより川島FP作成)








投資や家計全般のご相談についてはこちらをご覧ください。