やっぱり、誰でも持っているゴールドカードよりもプラチナカードはぐっと重みが違います。
なにしろプラチナカードは、(お金配りおじさんのように)プライベートジェットでも買えちゃいますから、これを持っていればモテること請け合いです。
プラチナカードが最高位に位置づけられる背景として、プラチナの生産量は金の1/18しかなく、超貴重な貴金属として崇められ、一般庶民には手の届かないものとして知られているためなのです。
しかし今、貴金属の取引市場では、現物のプラチナ価格が金の半値以下になってしまいました。
参考
金価格 1オンス1800ドル
プラチナ価格 1オンス840ドル
2020/7/9
CNN BUSINESS
どうしてこうなってしまったのか?
その理由は、金とプラチナは同じ貴金属ですが、その受給関係は正反対だからです。
現状、金の価格が暴騰した原因は、武漢ウイルスのパンデミック(世界的流行)により、世界経済がフリーズしてしまったため、株価は暴落し、不安に駆られた投資家たちは不変の価値がある金に殺到したためです。
では(プロの)投資家たちは、なぜ金と同様に不変の価値があるプラチナを買わないのでしょう?
その理由として、金は主として宝飾品として、資産(ヘッジ)として買われていますが、プラチナは工業材料としての需要が大半なのです。
参考
金が大好きな国は、インド、中国です。この国の一般庶民は、銀行預金よりも、持ち運びでき、すぐ現金化できる金を資産として買い続けています。政情が不安定だと自分の身は自分で守る覚悟が身に沁みているのです。一方プラチナは流通量が少なく、現金化にも難点があるため、これらの国では人気がありません。
貴金属類のパラジウムも1オンス2000ドルと超高価ですが、やはり主たる需要は工業用(触媒)なので、宝飾品や地金としての需要は僅かしかありません。
このため、町の宝飾店にはパラジュウムの指輪が飾っていないのです。
参考
パラジウムは加工が難しいため、プラチナ・金+パラジウムの合金(ホワイトゴールド)として宝飾品が作られています。(宝飾・投資用のパラジウムは、年間生産量290トンの内約38トン(13%)ぐらいです。近年は高値のためリサイクルから回収される量が宝飾に使用される量を上回っています。)
宝飾品としての金は、やっぱり見た目的に金色に光り輝いていますから、それを保有し身につける喜びは、地味な(高貴な?)プラチナなどに比較し格段に「映え」ます。
この金の年間の供給量は4,502トン(産出3,332トン、リサイクル1,178トン)あります。
参考
4,502トンというと護衛艦ぐらいの大きさを想像しますが、金の密度は19.32g/cm3なので、体積としては233㎥メートルしかなく、100㎡のリビング(?)に入ってしまいます。
これに対して、宝飾品の需要は2,129トン(47%)、中央銀行等の需要536トン(12%)、小口投資需要は982トン(22%)、工業用391トン(8.7%)となっています。
工業材料としての金の需要は僅か8.7%程度しかなく、約90%は投資用の資産として買われています。
一方プラチナの年間生産量は249.8トン(産出185.3トン、リサイクル64.5トン)です。(生産量は金の5.5%しかないので、常識的には金より高価なはずなのですが・・・)
そしてプラチナの用途別需要データは、工業用169.2トン(68%)、宝飾品66.1トン(26%)、小口投資9.7トン(3.9%)となっています。
プラチナの需要の大半は工業用(主として自動車の触媒用)ですから、世界経済が回復しないと(車の需要が回復しないと)価格は上がらないのです。
参考
今は金製品よりもプラチナの宝飾品が格安となっていますから、定額給付金で買うとしたらプラチナ製品がおすすめです。
以上より、金は株価が下がると値が上がり、プラチナは株価が下がると連動して値が下がるため、株価と反対の動きをする金が投資対象として選ばれているのです。(リスク低減効果)
注意
金価格が暴騰しているため、「プラチナもやがて値が上がる!」と素人を騙し、安いときに買いましょうと言い寄る悪い人たちがいます。気を付けましょう。
さて今「金」を買うべきか?
私の結論は「止めときなさい!」
バフェットが言うように、素人は値が高くなると買い、安くなる(値下がりする)と売るから儲けられないのです。
今、金を買っているのは短期筋の投機家です。
彼らは値動きが激しい商品ならなんでも参入し、短期で利ざやを稼いでいます。
こんな危ない時期に素人が手を出したら痛い目に遭います。
そもそも金が高くなった理由は、株安の他に、各国中央銀行がお札を刷りまくって、一人10~20万円もばらまいたことで、行き場のないお札が金に殺到しているためなのです。
参考
この暴落チャンスにバフェット(バークシャー・ハサウェイ)はドミニオン・エナジーから天然ガスパイプライン網を97億ドル(約1兆400億円)で買収しました。
(今の原油安で米国のシェール企業がバタバタと潰れているのに、天然ガスパイプライン(キャッシュ生産装置)に1兆円も投資できるとは、さすがバフェットであり、プロの投資家の面目躍如です。)
各国中央銀行の緩和政策(QE)が続く限り、当面はこの状況(金の高値)が続きそうです。
バスに乗り遅れまいと、金を買おうとしている人は多いと思いますが、エンゲージリングとして買われる方以外は、ばかな考えは早く捨てた方がよいと思います。(エンゲージリングも金ではなくプラチナがおすすめです。)
そんなものより私はS&P500またはTOPIXのETFを買うことをおすすめします。
参考
iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF(1655)がおすすめです。
株式などは暴落したときが買い時なのです。
そして金については、このパンデミックが収まり、世界経済が安定を取り戻し、1オンス1500ドル以下になったら、毎月定額購入するのがよいと思います。(投資資産全体の10%程度)
最後に金の現物投資(地金や純金積立等)と金を資産とする投資信託(ETF)を比較した場合の特質は以下のとおりです。(川島FPの個人的見解)
①やっぱり儲かるのはETFです。
日経ヴェリタス記事「めざせ、金投資マスター 3つの手法を徹底比較」
②保管、売買などがお手軽なのはETFです。(株式の投資信託と同じです。)
③ずしりと重い手応えがあるのは金の現物です。
④金の現物は保管管理がめんどうですし、盗難も心配です。
⑤ETFはNISAが使えるのでとってもお得です。
⑥金の現物は譲渡所得となるので、50万円の所得控除があります。
課税関係はつぎのとおりです。
金の現物の売買では、土地取引と同様に消費税が取られます。昨年購入した場合は8%の支払となり、今年売却すると購入者から消費税として10%をいただけます。つまり差し引き2%儲かることになります。
参考
SPDR®(スパイダー)ゴールド・シェア(1326)はお勧めなのだろうか?
超簡単・・・お金の運用法(その2)
金投資は儲かるのか?
金投資
リーマンショックで損したもの、得したもの(その3)