2011年5月14日土曜日

外貨投資にモダンポートフォリオ理論を適用してみたら・・・(その1)

(図はクリックすると拡大します。)


投資において最も重要で、真に利益につながる唯一の方法はリスクコントロールです。

この観点から前回の投稿では、FXにおけるレバレッジコントロールについて分析をしました。

この投稿に示した「安全倍率」以下で投資をすれば、確実に勝率が上がる(負けが少なくなる)はずです。(でも投資は自己責任でしてください。)

今回は、通貨の組み合わせによるリスクコントロール方法につい分析しています。

さて外貨投資において、投資信託の中には「通貨バスケット」が選択できるものがあります。

通貨バスケット:
国の為替政策において、米ドルとのレートを固定(ペッグ)する固定相場制がありますが、米ドル以外にユーロや円などの複数の通貨に対して一定比率で固定相場制とする方式を「通貨バスケット」と呼び、中国の元が現在はこの方式となっています。
同様に通貨選択型の投資信託では、ブラジル・レアルなどのように単一通貨を選択できるだけでなく、複数の通貨に分散できるタイプも出てきています。

「通貨バスケット」方式は、単一通貨によるリスクを複数通貨に分散することで、リスクコントロールを図ろうとするものです。

しかし「通貨の分散」は方向性としては正しいのですが、どの通貨の組み合わせが最も適切なのかについて投信会社からはなんの情報も提供されていません。

結局、複数に分散するとリスクを減らせると説明しているだけです。
そうしてお仕着せの分散効果もあやしい内容の選択支しか提供されていません。

たとえば「資源国」「BRICs」「アジア」「新興国」という素人投資家にはたいへん分かりやすい通貨の盛り合わせ(バスケット)になっていますが、これが分散なの?と思うような変な通貨の組み合わせばかりです。

つまり投信を売るための「分かりやすさ」が大事で、投資家にとって最も大事なリスクはそれほど減っていない商品ということになります。

ポートフォリオ理論を少しでも知っている投資家なら、この組み合わせって全部相関が高いんじゃないの?とツッコミたくなる内容です。

どうせ分散するなら「最適解」を計算してからお客様に提案すべきだと私は考えますがいかがでしょうか?

理論的に「最適な組み合わせ」を知るには、やはりモダンポートフォリオ理論から導く必要があります。


ということで、外貨投資(通貨バスケット)にモダンポートフォリオ理論を適用してみました。

しかし「最適解」が分かったところでその通貨の組み合わせが選択できる投信は販売されていませんから、応用範囲としては、FX、外貨預金、MMF、外債投資など、自ら選択し投資できる商品となります。

さて、この分析をしていると、外貨それぞれについてその「素顔」が見えて興味深いものがありますので順次ご紹介させていただきます。

図1は、最近の9通貨の動きを示しています。

それぞれ過去1年4ヶ月の平均値を100%としたときの値として無次元化してグラフに表示しています。(各通貨は対円の交換レートを使用しています。)

通貨の略号はつぎのとおりです。
USD 米ドル
EUR ユーロ
GBP 英ポンド
CAD カナダドル
CHF スイスフラン
AUD 豪ドル
ZAR  南アランド
BRL ブラジルレアル
CNY 中国元

図1から、折れ線グラフが100%超の位置にある通貨は、相対的に円より強く、100%以下の通貨は円よりも弱くなっている状況を示しています。(2011年5月10日現在)

最強はスイスフラン、次はオーストラリアドルです。

最弱は米ドル、次に中国の元です。

元が弱いのは不思議なようですが、米ドルに半ばリンクしているため連れ安となっているのです。

ガイトナー米財務長官とバーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長などが「強いドルは国益」と言っていますが、「ドル安」が現実の政策であることは図1から明らかです。

(米ドルは、国債などの形で日本を始め中国や中東諸国など世界中の国々で保有されており、米国政府はそれらの大切なお客様に対して口が裂けても「ドル安にしたい。」とは言えないのです。でも国家として世界に対して嘘をつくことはいけないことだと私は考えます。)

「ドル安+低金利政策」により早晩米国経済は回復するものと思われます。

なぜならNASDAQは既にリーマンショック前の価格を超え、ニューヨークDOWは現在のペースで行けば、年末には最高値更新が見えています。

一方我が国がこの20年間低迷している原因は、「低金利」政策ばかりで「円安」政策がないからです。
それは前記の米国のやり方を見るとよく理解できます。

為替政策に深入りしてしまいましたがこの辺で止めておきます。

以上の強弱4通貨以外は、強くもなく弱くもない中間層と言えます。

そして図1を全体として眺めると、各通貨は固有の状況と為替市場全般の状況を織り込みながら、ときに同じく、時に反対に動いていることがよく分かります。

各通貨の相関については次回で分析することにします。


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