「老後に2000万円不足する」問題が世間を賑わしていますが、この報告書の内容はすこぶる当たり前のことを書いているだけで、これをこじらせているのは選挙を目前に控えた野党側です。
とは言うものの、やはり多くの国民は「老後に不安」を抱えており、その不安を煽るちょっとした情報に敏感に反応します。
そこで、老後に不安をお持ちの国民の皆様にFPとして「特効薬」を処方しましたのでぜひお読みください。
私の処方箋は、清く正しく、これしかない「大正解」ですので、銀行や証券会社や来店型の保険屋さん、そしていかがわしいFPなどに騙されないようお気を付けてください。
特に「分配型投信」や「外貨建て個人年金保険」を売りたがる輩が多く居ますので注意が必要です。
後半でこの商品を買ってはいけない理由も詳しく説明します。
では本題へ
特効薬その1
「公的年金は老後生活の命綱なので、これを満額貰えるよう、最優先で保険料を払いましょう。」
公的年金は低リスク・ハイリターンであり、これに勝てる個人年金保険商品はありません。
そうすれば、65歳からサラリーマン家庭では、
月額平均24万円(老齢厚生年金11万円、老齢基礎年金6.5万円×夫婦2人分)
単身者は17.5万円(老齢厚生年金11万円、老齢基礎年金6.5万円)
が一生貰えます。
特効薬その2
「貯蓄」
高齢期の病気や介護、そして長生きリスクに備えるには貯蓄が大正解です。
「がん保険、介護保険、個人年金保険」などでは10%の人が得をし、90%の人が損をしますから、近寄らないのが御身のためです。
特効薬その3
「iDeco、NISAの最大活用」
20年以上の期間で比較すると、90%以上の確率で「貯蓄」は「株式投資」に勝てません。
まったく利子の付かない「貯蓄」で資産を保有するよりも、その30%程度はiDeco、NISA口座を活用し株式投資(インデックスタイプ)に振り向けましょう。
参考
個別株式は危険ですから、TOPIXや日経平均などのインデックスタイプのETFをお勧めします。iDeco、NISA口座で「固定金利商品」はお勧めしません。理由はこちらに述べています。
特に、iDecoは所得控除(税金が安くなる)があり、また会社負担ですから、使わない手はありません。
そして個人事業主などの国民年金の方は、年金収入が6.5万円しかありませんから、こちらを参考にiDecoなどを最大限に活用すれば節税分だけで大きなリターンを稼げますし、老後資金準備として、とてもお勧めです。
特効薬その4
無料相談の誘いには絶対のらないこと。そのような窓口にいる人たちは、商品を売ることで利益を得ているので、手数料収入の良い屑商品を勧められます。
以上です。
次に「分配型投信」や「外貨建て個人年金保険」を買ってはいけない理由です。
「外貨建て個人年金保険」についてはすでに投稿しましたのでこちらをご覧ください。
ここでは、毎月分配型投資信託がお得でないことを証明したいと思います。
金○庁が長期投資には適さない(老後資金準備として不適な)商品と断言し、金融機関に「売るな!」と指導している「毎月分配型投資信託」は、手を替え品を替えて新商品を作りだし、金融リテラシー(金融知識)の乏しい人たちにしぶとく売り続けています。
参考
日経記事「分配型投信、新世代が人気 分配金控えめで長生き対応」
この新世代の「分配型投信」はたこ足配当(元本を取り崩して配当に充てている)が限界となったため、分配金を低めに設定し「長生き」に対応させたものですが、もともとの出自がいかがわしいものをお化粧直ししたところで「長期投資に適さない」商品であることに変わりはありません。
しかしこの商品は高齢者はもとより、30代、40代の人たちも「老後不安」を煽られて買わされており、FPとして極めて残念に思っています。
若い人たちにもこの商品が売れる原因として「老後不安」とともに「毎月配当金が貰える」ことがとても魅力的に思われていることと、一方金融機関側も生き残りを賭けて「(手数料のよい)分配型投信」を死に物狂いで売ろうとしていることがあります。
では、「分配型投信」と「分配しない投信」の比較から始めます。
いずれにしても原資産としての投資信託は同じものです。
仮に利回り2%の投資信託があったとすると、「分配しない投信」として売る場合は、配当金に関わる煩雑な業務もなく、税金もかからないので、信託報酬は0.5%と格安となり、20年後の元本は1.35倍(戻し率135%)になります。
この同じ投資信託を「分配型投信」に変装して、年に200円(たこ足型)、100円(分配金控えめ)を配当した場合、業務が煩雑で税金もかかるため、信託報酬を1.6%として試算すると、20年後、1万円の元本は、200円配当で6,675円、100円配当では8,753円に減ってしまいます。
いずれも配当金を支払うタイプは、基準価額が目減りしますから、たこ足配当に変わりはありません。
200円配当では、20回分で計4000円の配当金を受け取れますから、20年後の元利合計額は10,675円、100円配当では元利合計10,753円にしかなりません。
参考
戻し率が8%ぐらいの個人年金保険がありますが、このグラフの場合、20年後のリターンが35%あるので、この内8%を契約者に配当し、27%が保険会社の儲けとなります。(保険会社はリスクを取るのでこのぐらい貰うのが当然?なのです。)
この結果から見ると「儲かったぞ!」という実感はたぶん・・・ないのでは。
いずれにしろ、1万円を投資したお宝(と信じた)投資信託が、20年後に6,675円になってしまうのですから、「騙された~~」と思うのではないでしょうか。
ですから、この場合の賢い選択は、無配当、信託報酬0.5%の商品を選ぶことなのです。(投資したら後は何もせず、じっくり複利で増える商品を選ぶ。)
参考
バランス型とか、毎月配当とか「お得感満載」の投資信託が人気のようですが、結論として、運用者側が手間暇をかけている投資信託は、そのための手数料として毎月、毎年手数料が天引きされますので、購入者としてはまったく儲かりません。したがって購入者も運用者側も「いじるな!、さわるな!」が儲けるためのベストな方法なのです。
参考
長期の投資期間にはどうしてもお金が必要となる時期があります。その場合は投資信託を一部解約し、必要なお金を手に入れればよいのです。ETFならいつでも株式と同様に市場で売却できますから、とても便利です。
前記の利回り2%は多少意地悪なデータかも知れません。
では利回りを常識的な4%とします。
分配金(100円、200円)と信託報酬(0.5%、1.6%)は前記と同じです。
200円配当は、基準価額は1万円を下回りません。20年後めでたく11,012円となりました。
戻し率110%ですから褒めてもよいかも知れません。
でも無配当、信託報酬0.5%の場合は1万円が19,898円(元本の約2倍)になっていますから、これに比べるとかなり見劣りします。
この結果から、リターンが良い投資信託ほど、配当金を貰うとハンデが拡大してしまうのです。(つまり、20年後のグラフの広がり方がより大きくなるため、配当金をもらわなかった人の方がよりがっぽりと儲かります。)
金融庁が「毎月分配型投資信託」が長期投資に適さないと言っている理由がここにあります。
ですから、賢い投資家は「果報は寝て待て!」なのです。
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