経済も市場も分かっていない日経さんにご意見申し上げます。
7月18日付日経記事「タダ乗り投資 市場蝕む パッシブ化の弊害強く」
記事要旨
1 世界の株式市場では、アクティブ運用に対して、パッシブ運用が急速に膨張している。
参考
アクティブ運用:投資家に委託された運用者が銘柄選択を行う運用方法。
パッシブ運用:銘柄選択を行わず、市場をまるごと買ってしまう(インデックス)運用方法。
2 現状パッシブ運用のシェアは、日本が73%、米国が約50%、欧州が約40%となっており、重大な構造変化(パッシブ運用の寡占化)が進行している。
3 一方、インデックスファンドは組み入れ時はプロたちの買い占めにより割高であり、組み入れ後は下落してしまうので、パッシブ運用は非効率(高値づかみ)である。
4 リーマン危機後、低コストのパッシブ運用が7.4倍と伸び、また多くのアクティブファンドは指数(インデックス)に勝てず、資金流出が続いた。
5 ノーベル経済学賞のロバート・シラー教授は、この状況を嘆き、「投資家全員がパッシブ運用になってしまったら、誰が市場に情報を反映させるのか」と言った。
6 そもそも、パッシブ運用の有効性は、「効率的市場仮説」が裏付けだが、市場に適正な株価が付けられているのは、アクティブ運用の運用者が必死で情報を集め、割安な株価を発見しているからである。
7 つまり「パッシブ運用は他人の努力へのフリーライダー(タダ乗り)だ。」(シラー教授)
8 パッシブ運用は、構成銘柄を持ち続けるため、市場の流動性を下げ、結果として相場の変動を高めている。(だから日経平均はs&p500よりも下落してしまうのだ。)
注意
日経平均とs&p500の今の相関係数はほぼ0です。つまり無関係なので、日経の分析は間違っています。たぶんコロナの感染率及びワクチンの接種率などの国内事情の影響が強いと考えられます。
日経編集委員殿の主張は以上のとおりです。
そして結論として「パッシブ運用が実は非効率であるにも係わらず、膨らむ一方だ。」
と嘆いておられます。
まあどこかの運用者の愚痴を書いただけかも知れませんが・・・。
それとも、日経は○○証券、○○銀行から広告をいただいて、すばらしいアクティブファンドを広めたいと考えているのでしょうか?
いずれにしても無駄な努力ですので、5年後にあんな記事書くんじゃなかったと反省する前に、冷静に考え直した方がよいと思います。
なぜ私がそのように考えるのか、理由を説明したいと思います。
「パッシブ運用は他人の努力へのフリーライダー(タダ乗り)だ。」というのは事実です。
市場が効率的であるのは、多くの人々の努力により、あらゆる情報が瞬時に株価に反映されているからです。(一時的に当然アノマリーはあります。)
そこでアホみたいに、味噌も○も一緒に買ってしまうパッシブ運用は非効率かも知れませんが、競争原理により市場には美味しい味噌の方がとっても多いので、バフェット氏もその実力を認めざるを得なくなっています。
では、日経さんが危惧しているように、このままパッシブ運用が100%市場を支配してしまうのでしょうか?
それはあり得ません。
なぜなら割安な株価を血眼で発見していた人たち(アクティブファンド運用者)がいなくなってしまったら、市場にはお宝がザックザック見つかるようになります。(効率的市場のパラドックス)
素人投資家でも簡単に見つけられます。
そうなると、投資家全員が個別株の物色に狂奔することになり、なかには名のある運用者(AIの可能性も)が現れ、「成金ファンド(アクティブ運用)」を立ち上げるでしょう。
たぶんこの「成金ファンド」は1日で1000億円ぐらい集めるのではないでしょうか。
そしてインデックスファンドからアクティブファンドへ怒濤の流出が始まります。
日経さんが言うようにインデックスファンドは非効率であり、その中には味噌も○も一緒に入っていますから、味噌だけを選べるファンドには勝てません。
そして時間を経て、優れた運用者の出現により、再び市場は「効率化」され、投資のプロもサルも成果は同じ世界となり、非効率だが儲かるパッシブ運用がもてはやされるようになるのです。
したがって日経さんのようにパッシブ運用が非効率だと足を引っ張ったところで、アクティブ運用に投資家が戻ってくる可能性はありません。
今考えなくてはならないのはパッシブ運用の弊害をどう抑えるのかではなく、とことんまでパッシブ運用を突き進めた結果どうなるのかを確認することなのです。
「効率的市場のパラドックス」があるのかどうか固唾をのんで見守ればよいのです。
結論
私は、アクティブ運用とパッシブ運用は相補的と考えており、「神の見えざる手」により、やがてお互いが棲み分けできる世界がやって来ると信じています。