企業型の加入状況については、従業員300人以下の中小企業が約80%を占め、加入者数は約300万人を越えました。
順調に普及が進んでいる一方で、加入者が幸福になっているかどうかは別のようです。
確定拠出企業年金の現状を見たとき、私が感じる問題点としてつぎの2点があげられます。
○超低金利と株安で加入者の運用利回りはマイナス
○社内担当者と加入者間の意思疎通の少なさ、教育機会、情報提供の少なさ
(マイナスの運用成果はだれのせいでもありませんが、社内担当者としても肩身が狭く、積極的にどうしたら良いのかとのアドバイスも困難な状況のようです。)
制度が普及する一方で全体的にはどうしようもできない「あきらめ」ムードが蔓延しているように見受けられます。
しかし、加入者の心の叫びとして、
・今後の経済の見通しはどうなの?
・わたしはどうしたらいいの?
・ポートフォリオの組み直し方やスイッチング方法を教えて!
と思っているようです。(某アンケート調査結果)
つまりは、社内担当者や運営管理機関から十分な情報提供やアドバイスが行われていないのではないかと考えられます。
制度の導入当初は制度普及のため一生懸命導入教育を実施し、加入者は曲がりなりにも勧められた分散投資先として投資信託を購入するものの、その後はどうしたらよいか分からず、相談先もなく、「ほったらかし」というのが現実だと思われます。
中小企業が8割を占める制度ですから、個人々々へのきめ細かな対応には限界があると思われますが、「マッチング拠出」の導入など制度の一層の普及が図られる方向にあるので、「あきらめ」ムードはその大きな障害と言えます。
ここで私が大切だなと思うのは、加入者に対する「投資教育」です。
確定拠出企業年金制度は強制加入であり「加入者自らがリスクを負う」制度ですから、加入者全員が「個人投資家」とならなければなりません。
知識がない → 不安だ → リスは避けたい → 確定利回り商品
というのが多くの加入者の行動パターンではないでしょうか。
しかし、毎月1万円を0.1%の金利で30年間積み立てた場合、元本360万円に対して、利子は税込み5.3万円にしかなりません。その利子も実際は手数料としてほとんどが取られてしまい、元本確保がやっと(短期的には元本割れの可能性もあります。)だと思われます。
いずれにしても「投資知識」がない人にとっては「不安」と「増えない年金」というありがたくない現実と未来が待っています。
ではどうしたらよいのか?
「投資知識」を身につけ「リスク」を取る決心をすることです。
なぜなら老後資金の運用では運用期間が長期となるため「投資」は避けることができないからです。
ですから、そのための覚悟と準備が必要であることを認識していただきたいと思います。
準備とはなにかと言えば、
・商品知識(商品特性とコスト)を身につけること
・リスクとリターンの関係を知り自分自身のリスク許容度を見極めること
・分散投資の意義を理解し商品選択ができること
・ポートフォリオの構築見直しができること
・マクロ経済の知識を有すること
あまり深入りする必要はありません。
のめり込んでもいけません。
長く株式投資を経験されている方でも、分散投資の意義を理解されていなかったり、リスクの見極めができていなかったりします。
このような人にとっては投資が「競馬の予想」と同じ世界(いわゆる博打)になってしまっています。
老後資金の運用が「博打」では大変困った状況になります。
投資で大事なことは、リスクを取りそしてリスクをいかにコントロールするかです。
「リスクコントロールができること」が個人投資家の準備の目標となります。
株式市況で一喜一憂したくない方もおられると思いますが、あなた任せですと「不安」になりますが、自分でリスクコントロールできていれば「楽しみ」に変わります。
人生の新たな「楽しみ」を見つけてみませんか?