2014/12/18
通貨選択型ハイ・イールド債券投信はお勧めか?(号外)
昨年から「通貨選択型」のハイ・イールド債券投信が人気となっています。
口コミで人気が出たというよりは、証券各社が今の低金利に満足できない団塊の世代の方に「高利回り」を武器に強力にセールスしているのが実態のようです。
でも「通貨選択型」のハイ・イールド債券投信を購入された方がちゃんとリスクも理解されておられるのか極めて疑問に感じています。
高金利ブームが津波のように投信の世界覆い尽くしており、この投信の契約者はただただブームに流されているだけのように思えてなりません。
一方現在の円高で一儲けという「欲」の部分もあるようですが・・・
過去にも利率変動型投信がブームになりましたが、金利の低下と共にブームが去り、後には悲惨な結末が待っていました。
団塊の世代の方達は、年金と貯蓄の取り崩しで生活しておられるため、少しでも利回りのよい商品を常日頃から考えていられるようです。
そこに、「債券型の投信を購入すれば高利回りで毎月毎月生活費が口座に振り込まれます。」と誘いをかけられたら、2人に1人ぐらいは契約してしまいそうな状況ではないでしょうか。
たぶん、「ハイイールド」とか「通貨選択」とか言われても「儲かりそう」なイメージしかなく、「リスクがありますよ」と言われても右耳から左耳に通過してしまうだけだと思われます。
(たぶん証券会社の営業も仕組みを詳しく知らないために「リスクあり」としか説明できないのでしょう。)
さて欲に眼がくらんだ人はしょうがないとして、危険かどうかしっかり見極めたい方のために参考となるよう、FPとしてこの人気の投信が安全なのか、お勧めなのかについて以下に分析評価しました。
具体例として野村米国ハイ・イールド債券投信(通貨選択型)を取り上げます。
このファンドの仕組みなどは後にして、まず上の表をご覧ください。
純資産額を比較するとブラジルレアルコース(毎月分配型)がダントツの1位であり、2番人気の豪ドルの5倍を上回っています。
現在もブラジルレアルコースは人気が高く純資産額が増加しています。
この人気の理由は、毎月の配当金が最も高い(儲かる)からのようです。
設定以来の累積配当金がブラジルレアルコース(毎月分配型)は4,010円と、例に挙げた6本の投信中最高額となっています。
でも本当に儲かったのか?
投資の元利合計額、つまり(基準価額+累積配当金=資産合計額)で比較すると、最も儲かっているのは、南アランドコース(年2回分配)の18,017円です。
次に儲かっているのは、豪ドルコース(年2回分配)17,924円です。
ブラジルレアルコース(毎月分配型)は、この6本の投信中最下位となっています。
毎月分配型を購入された方は「基準価額」について理解していないことがよく分かります。
しかし、この判断は結果論でもありますから、片手落ちかも知れません。
では、同じブラジルレアルコースの毎月分配と年2回分配を比較してみます。
儲かったのは年2回分配の方で、資産合計額が毎月分配よりも699円も上回っています。
毎月分配型を購入された方は「複利効果」についても理解していないことが分かります。
(複利効果については、こちらを参考に見てください。)
ブラジルレアルコース(毎月分配型)を選んだ方は、賢い投資家とは言えないようです。
でも、「儲かっていればいいのではないか!」との声も聞こえてきそうですが、高配当の裏にある高リスクについても十分な理解が必要だと私は考えます。
「基準価額」や「複利効果」は投資の基礎的知識ですが、「ハイ・イールド債券投信」や「通貨選択型」は中上級レベルと言えます。
果たしてどの位の方が正しくこの投信のリスクを理解して購入されているのか、たいへん心許ない限りです。
続く
参考
通貨選択型ハイ・イールド債券投信はお勧めか?(その2)
通貨選択型ハイ・イールド債券投信はお勧めか?(その3)
ブラジルレアルに興味のある方へ
高金利通貨に興味のある方へ(その1)
高金利通貨に興味のある方へ(その2)