2019年6月10日月曜日

老後資金は2000万円必要なのだろうか?


金融庁の金融審議会(市場ワーキング・グループ)が「高齢社会における資産形成・管理」という報告書を作成しました。

この報告書の結論として、老後生活では毎月5万円が不足し、65歳から95歳までの30年間では約2,000万円不足することになるので、国民の皆さん、若い時からの資産運用が大切ですよ、と書いています。

これに対して、野党やマスコミはここぞとばかりにこの問題を「政局」にしたいようです。

意見
 騒いでいるアホ野党は、国民の老後生活のことなんかまったく考えていません。選挙で自民党の足を引っ張り、自分が目立つことで当選したいと思っているだけです。まったく情けない。

参考
消えた年金5000万件

野党の論点は、厚労省の掲げる「100年安心できる年金システム」と、この報告書の「2,000万円不足する」は同じ政府なのに矛盾しているではないかと言いがかりを吹っかけています。

しかし政策には100点満点はないのですから、どっちがほんとうなんだと詰め寄られたところで、「いろいろ考えながら政策を進めています。」と言っておけばよいだけです。

そんなことよりも、読者の皆さんは今回の報告書について「これってほんとうなの?」と思っておられることでしょう。

以前(9年前)私も「老後資金の準備と運用(その1)」で試算し、公的年金の他に1,867万円~2,257万円が必要と分析しました。

その際の前提と試算額は、
夫65歳(サラリーマン)、妻60歳
夫は83歳、妻は88歳で死亡した場合(いずれも平均寿命を生きたとして)
公的年金額
夫 老齢厚生年金110万円、老齢基礎年金79万円、加給年金40万円(5年間)
妻 老齢基礎年金79万円(専業主婦、夫生存時)、振替加算5.8万円、
  遺族厚生年金82.5万円(夫死亡後)
    経過的寡婦加算2万円
夫婦が受け取れる年金合計額は約6,933万円
夫生存時の年金月額 約22.8万円
夫死亡後の年金月額  約14万円
この試算より、夫婦二人の必要生活費を28万円とすると5.2万円の不足となります。
細部はこちらをご覧ください。

「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」もほぼ同様に5万円不足すると書いています。

違う点は、私は平均寿命や公的年金額から試算しているのに対して、報告書は、高齢者世帯の家計調査から、収支の実態として「赤字額が5万円となっている。」と指摘している点です。

意見
 家計の平均として「赤字額が5万円となっている。」のは正しいと思いますが、なぜ65歳から95歳までの30年間で約2,000万円不足すると書いてしまったのか・・・蛇足ですね。

公的年金について、私は「満額」もらえるとして試算していますが、実際の高齢者世帯の年金額はたぶん6割程度と低く、また支出額も28万円よりもかなり低いものと思われ、結果として家計はいずれの場合も5万円の赤字としています。

参考
 総務省統計局の家計調査「夫婦高齢者世帯のひと月あたりの収支の推移」より
2015年に高齢者夫婦の消費支出は平均約24万円/月でした。
 ですから「100年安心できる年金システム」を信頼して、保険料をきっちり納め、満額の年金を貰えれば、そこそこの生活が成り立ちます。しかし現状は保険料の未納や、免除により平均すると満額貰えていないので、5万円足りてませんというのが実態なのです。(そこで政府は低年金世帯に3万円の給付を行っています。)

意見
 この報告書では「高齢者世帯の家計調査結果から5万円不足している」としているのに、悪意のある人たちに「公的年金が足りないから5万円不足する」と読まれてしまうような書き方をしている点が残念な所です。

しかし野党やマスコミの指摘はともかくとして、皆さんが知りたいことは「年金の真実はどうなの?」ということだと思いますので、この報告書に何が書かれているのかを、私見を加えつつご紹介してみたいと思います。


最初に金融審議会の立ち位置は、公的年金システムにケチを付けることではなく、「人生100年時代に備えた資産形成」が必要であり、「それに沿った金融商品・金融サービスを提供すること」が要請されているので「高齢社会のあるべき金融サービスとは何か」をテーマにしています。


以下報告書の細部。

1 全般状況と問題点

(1)長寿化
平均寿命が伸びており「人生100年時代」を迎えようとしている。
私見:少しいい加減な分析。世の保険屋さんレベルですね。95歳の根拠もなし。

(2)単身世帯等の増加
結婚後、夫婦と子供、親と同居し、持ち家を持ち、老後の親の世話は子供がみるというようなかつて標準的と考えられてきたモデル世帯は空洞化してきている。

私見:税制、社会保険制度や年金制度は家族、世帯を前提として作られているため、単身世帯は不利となっています。

(3)認知症の人の増加
65 歳以上の約5人に1人が認知症になると推計され、金融資産の管理に問題

私見:相対有病率のような統計分析がされていないので、今より悪くなるのか良くなるのかを判断できるデータではない。素人の分析レベル

(4)収入・支出の状況
「失われた 20 年」とも呼ばれる景気停滞の中、賃金も長く伸び悩み、高齢世帯の収入は低下傾向であり、公的年金の水準低下や保険料upが予測され将来は暗い。

私見:この部分は書きすぎで有り、厚労省から横やりがありそう。

高齢者の支出は現役のころより2~3割程度減少。
高齢世帯(夫婦)の毎月の赤字額は5万円。
この状況が20年間続くと
    金融資産から約1,300万円の取り崩し
この状況が30年間続くと
    金融資産から約2,000万円の取り崩し

私見:・・・ですから皆さん資産運用が必要なのです
   と言いたいようです。

(5)就労状況
高齢者の就労継続は今後も続く。転職を繰り返すと退職金が少ない。
退職金と公的年金は老後生活の支えだが、退職給付制度は減少傾向。
退職金はピーク時から約3~4割程度減少し、現状1,700~2,000万円程度

私見:つまり高齢になっても何らかの収入を得る必要があると言いたいのかも

(6)金融資産の保有状況
65 歳時点における金融資産の平均保有状況は、
夫婦世帯    2,252 万円
単身男性    1,552 万円
単身女性    1,506 万円
(住宅ローン等の負債のある者を含むので、正味資産はこの額を下回る)

(7)米国の状況
401(k)プラン等(確定拠出年金)の後押しにより、ここ20年間で高齢世帯の金融資産は3倍に伸びている。(日本では横ばい状態)
この差は現役世代から資産形成を継続してきたかどうかの違いによるものである。
わが国でもつみたて NISA や iDeCo 等が整備され、個人が長期の資産形成を行うに際して、制度的な環境が整いつつある。

私見:資産形成は「貯金」ではムリで、 米国を見習ってNISA や iDeCo 等を活用した「投資」が必要だといいたいのです。

(8)金融環境に対する意識
国民は「老後に対する不安がある」と考えており、その原因は「お金」です。
この対策として「働く」「節約する」が多いものの、「資産形成に取り組む」人は少ない。
特に対策として「投資」を挙げた人は2割以下しかいない。

2 対策

(1)資産寿命を延ばすことが必要(原文のまま)
「夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ 20~30 年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300 万円~2,000万円になる。この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである。それを考え始めた時期が現役期であれば、後で述べる長期・積立・分散投資による資産形成の検討を、リタイヤ期前後であれば、自身の就労状況の見込みや保有している金融資産や退職金などを踏まえて後の資産管理をどう行っていくかなど、生涯に亘る計画的な長期の資産形成・管理の重要性を認識することが重要である。」

私見:FPの立場で言わせて頂けば「そのとおり!」

(2)ライフスタイル等の多様化により個々人のニーズは様々
人生いろいろ、男もいろいろ、女もいろいろ。
「今後は自らがどのようなライフプランを想定するのか、そのライフプランに伴う収支や資産はどの程度になるのか、個々人は自分自身の状況を「見える化」した上で対応を考えていく必要があるといえる。」

私見:これってFPの教科書みたいだね~。

(3)公的年金の受給に加えた、生活水準を上げるための行動
「資産形成・運用といった「自助」の充実を行っていく必要がある。」

3 年代別の対応

(1)現役期
○早い時期から資産形成の有効性を認識する。(つまりお金の勉強をしなさいということ。)
○生活資金やいざというときに備えた資金については元本の保証されている預貯金等により確保しつつ、将来に向けて少額からでも長期・積立・分散投資による資産形成を行う。
○自らにふさわしいライフプラン・マネープランを検討する(必要に応じ、信頼できるアドバイザー等を見つけて相談する)。  → ぜひ川島FPにご相談ください(^^;)
○金融サービス提供者が顧客側の利益を重視しているかという観点から、長期的に取引できる提供者を選ぶ。   → たぶん素人にはムリ

(2)リタイヤ期前後
○退職金がある場合、早期の情報収集と使途の検討及び退職金を踏まえたライフプラン・マネープランを再検討する。  → ぜひ川島FPにご相談ください(^^;)
○必要に応じ、収支の改善策を実行する。
○長い人生を見据えた、中長期的な資産運用の継続(長期・積立・分散投資等)とその後の計画的な取崩しを実行する。

(3)高齢期
○心身の衰えを見据えてマネープランを見直す(医療費、老人ホーム入居費等)。
○認知・判断能力の低下や喪失に備え、取引関係の簡素化など心身の衰えに応じた対応をしやすくする。また、金融面の本人意思を明確にしておき、自ら行動できなくなったとしても、他者のサポートにより、これまでと同様の金融サービスを利用しやすくしておく。

4 金融サービスのあり方
(1)顧客の資産寿命を伸ばしていく上での金融サービス
○顧客本位の業務運営の徹底
    騙すな! ぼったくるな!    川島FPの意見です。
○手数料の明確化
○リスクやリターン等を顧客が自ら判断できるようにするための分かりやすい情報提供等
○サービスに見合う適切な対価の説明と請求(サービスの持続可能性や顧客の利用しやすさにも配慮)

(2)年代別の対応
○現役期の顧客への対応
金融以外の資産・負債も含む家計のポートフォリオ全体を俯瞰し、個々の状況に即したマネープランの提案など総合的なコンサルティングサービスの提供。

私見:このコストは金融商品の販売による利益で賄われるので、家計のポートフォリオ全体を俯瞰する手間賃は金融機関側の持ち出しになりそうです。このコストをペイするためには相談料を負担してもらうしかないのでは。

○リタイヤ期前後の顧客への対応
就労延長や支出抑制策を含めた、特定の金融サービスに留まらないライフプラン・マネープランの提供

私見:いったい誰がこんなこと出来るのか知らん。

○高齢期の顧客への対応
業界の垣根を越え、非金融サービスとも連携した総合的なサービスの提供

私見:いったい誰がこんなこと出来るのか知らん。
     なんでも書きゃーいいってもんじゃないだろう~・・・

5 環境整備
(1)資産形成・資産承継制度の充実
税制面で一定の優遇が行われている「つみたて NISA」と「iDeCo」があるので、これを積極的に宣伝し、大いに普及させましょう。

「つみたて NISA については、時限を撤廃し、恒久的な措置とすることが強く望まれる。」

「また、非課税保有期間について無期限とすること、ライフプランに沿って拠出額を柔軟に変更させることができるようにすること、現在は回転売買防止の観点などから認められていないスイッチング6を条件次第で可能とすること、その他、例えば配偶者死亡時において NISAの非課税枠を引き継げるようにすることなども、検討していくべき課題であるとの指摘があった。」

「iDeCo についても、長寿化を踏まえ、拠出可能年齢の上限を引き上げることのほか、利便性向上や働き方の多様化等への対応、また、更なる税優遇を行うことの政策的必要性を勘案して、拠出限度額のあり方についても検討することも望ましい。」

私見:金融庁が実施する準備ができているから審議会の報告書に書かせているので、準備ができていないことは絶対に書かせないのが正しい役人の仕事の仕方なのです。この報告書の下書き原稿は、当然金融庁の事務局が作成しているはず。

(2)金融リテラシーの向上
私見:各年代について「お金」のお勉強をさせましょう。
     個人個人が「お金」のことを知らないと悪い人たち(金融機関)に騙されますよ。
   
(3)アドバイザーの充実
私見:たぶん川島FPに相談しましょう! と言っているように思えます。(^^;)


以上金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」を要約してみました。

多少の誇張や我田引水があるかと思いますが気にしないでください。


参考
iDeCo(イデコ)の投信は9割りが くずだ!



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