2011年5月13日金曜日

外貨投資にモダンポートフォリオ理論を適用してみたら・・・(その2)



(表及び図はクリックすると拡大します。)

表1は、図1で取り上げた9通貨について全組み合わせの相関です。

また右側には、各通貨のリスク値(標準偏差σ)を記しています。

この9通貨の中で最も変動(リスク)が小さい通貨は南アランド(σ=3.1%)です。
最も変動(リスク)が大きい通貨はユーロ(σ=5.5%)です。

南アランドやブラジルレアルそして元などの新興国通貨は為替政策により極端な変動をコントロールしていると考えられます。

一方先進国は為替への介入をしないことを建前としていますから、当然変動が大きくなります。

特にPIGS問題を抱えるユーロについては、金利上昇期待との狭間で大きく上げ下げを繰り返しています。


表1の見方は、一例として左列のGBP(英ポンド)と上列のEUR(ユーロ)の組み合わせ(うすく色付けしている部分)の相関が0.89となることを表しています。

当然ですが、同じ欧州の経済圏ですから英ポンドはユーロと密接に連携しています。

注:相関の意味
相関は2つの変動する値について、どの程度同じような動きをしているのかを定量的に判断するための数値です。
まったく同じ動きならば値はです。
まったく反対の動きをしているときは-1となります。
のときは相互に無関係に動いている状態を示しています。
2つ通貨(または2種類の資産)に投資する場合は、なるべく相関の低いもの(-1に近いもの)同士を選べば、全体のリスクを低下させる効果が大きくなります。

ユーロ&英ポンドのように仲の良い組み合わせとしては、米ドル&元(相関0.96)、元&カナダドル(相関0.90)があります。

この組み合わせは、リスク低減効果がありませんからできるだけ避けるべきです。

では最も相性の悪い(相関の低い)組み合わせを見てみます。

米ドル&スイスフラン(相関-0.27)、次に元&スイスフラン(-0.09)、ほぼ同値で米ドル&豪ドル(-0.04)となっています。

この相性の悪い通貨ペアはお勧めです。

次にお勧めのグループは、相関が0.5以下の青色の数値の組み合わせです。
英ポンド&豪ドル(相関0.39)などもよいかも知れません

でもこの組み合わせは本当に効果があるの?
と疑い深い人もおられるかと思いますので図2に証拠を示しています。

図2はリスク&リターン図です。

横軸はリスク(標準偏差)、縦軸がリターン(利回り)を示しています。

取り上げた組み合わせは、「米ドル&スイスフラン」と「米ドル&豪ドル」です。

各通貨のリターンは2010年1月4日の終値に対して2011年5月10日の終値を比較して算出しています。(厳密にはスワップポイントによるインカムゲインも考慮すべきですが、図2を作成した目的がリスク低減効果の説明用なので、リターンについては適当な数値でごまかしています。)

さて、3通貨の固有の位置は100%と表示されている場所です。

その地点より、たとえば(米ドル90%、スイスフラン10%)、(米ドル80%、スイスフラン20%)、( )、()・・・と組み合わせの比率を変化させた場合のリスク&リターンの位置の変化を点で示しています。

が米ドル&豪ドル(以下P1と記します。)、が米ドル&スイスフラン(以下P2と記します。)の組み合わせになります。

各通貨の固有のリスク&リターンは

・米ドル リスク4.8%、リターン-13.6%
・スイスフラン リスク3.9%、リターン2.36%
・豪ドル リスク4.4%、リターン3.83%

図2より各通貨を組み合わせることによりリスクが低下していることが分かります。
P1及びP2の2つのポートフォリオにおいてリスクが最も低下する組み合わせ比率は、

P1では、米ドル40%、豪ドル60%
最小リスクは、3.19%

P2では、米ドル40%、スイスフラン60%
最小リスクは、2.60%

P1及びP2による効果としては、

P1において、
米ドルはリスクが 4.8%から3.19%に低下
豪ドルはリスクが、4.4%から3.19%に低下

P2おいて、
米ドルはリスクが、4.8%から2.60%に低下
スイスフランはリスクが、3.9%から2.60%に低下

いかがでしょうか。
2つの通貨を組み合わせるだけでかなりのリスク低減効果が期待できます。

先の投稿「FX(外国為替証拠金取引)における最適な倍率(レバレッジ)は何倍なのか?」において、米ドルのσは4.8%、2σは9.6%としていましたが、P1とした場合はσが3.19%、2σは6.38%まで低下させることができます。

その結果安全倍率を拡大することもできます。
(ここでは具体的倍率は示しません。みなさんは「P1」の組み合わせにより単一通貨の場合よりもさらに「余裕」が生まれるとお考えください。)

組み合わせ方については、40%と60%としましたが、現実的には米ドル4万ドル、豪ドル6万ドルのようになります。

投資額が少ない場合は、米ドル1万ドル、豪ドル1万ドルのように組み合わせても十分なリスク低減効果が期待できます。


参考
外貨投資にモダンポートフォリオ理論を適用してみたら・・・(その1
FX(外国為替証拠金取引)における最適な倍率(レバレッジ)は何倍なのか?(その1
絵で分かるモダンポートフォリオ理論(その1


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