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3 短期間のリスク
リスクσ(シグマ)はデータ期間が長期になると増大します。
1年間ではσは4.8%ですが、3年間ではσは8.8%になります。
一方、1日~30日の比較的短期間においてはどうでしょう。
図3は1日間、5日間及び30日間について、始値からの高値、安値の変動値(絶対値)の分布(値幅分布)を示しています。
横軸は始値(0円位置)に対する変動額(高値・安値について絶対値の大きい方の額)、縦軸は発生頻度(当該期間内でその変動額が発生する確率)になっています。
図から、期間が長くなると変動の幅が拡大し、発生確率がフラット化している傾向がよく分かります。
定量的には、
1日間では、3円以内に変動値の99%が含まれる
5日間では、5円以内に変動値の98%が含まれる
30日間では、8円以内に変動値の92%が含まれる
1年間では2σが8.16円であり、この範囲にデータの95%が含まれていますから、30日間のリスクは1年間のリスクとほぼ同程度と言えます。
そして図3において注目点は、1日という短期間でも1円を超える変動が起こる確率が30%もあることです。
このデータ期間において、1日の最大の変動値は、7.1円、
5日間の最大変動値は、9.5円、30日間では15.4円でした。
この最大の変動が発生した時期は、いずれもリーマンショック直後の2008年10月下旬でした。
データ期間を最近の1年間とした場合は、
1日間では、2円以内に変動値の97%が含まれる
5日間では、4円以内に変動値の98%が含まれる
30日間では、5円以内に変動値の93%が含まれる
1年間とした場合には、それぞれリスクの変動幅が1円から3円縮小しています。
このデータ期間において、1日の最大の変動値は、5.9円(1.2円の減少)
5日間の最大変動値は、5.9円(3.6円の減少)、30日間では6.3円(9.3円の減少)でした。
1日間で1円を超えて変動する確率も12.6%に低下しています。
したがってリーマンショック直後に比べ、この1年間はかなりリスクが低下していると言えます。
4 リスクとレバレッジの関係
投資において最も重要な点はリスクコントロールです。
損失はそのほとんどがリスクコントロールの失敗により発生します。
したがって負けない(勝てるかも知れない?)投資を実践するためには、未来を予測することではなく、最悪に備えることが最も重要となります。
これまでFXにおけるリスクについて定量的に分析してきました。
このリスクに対して、投資額(証拠金額)が上回ればとりあえず「安全」と言えます。(ロスカットなどを考慮すれば完全に安全圏とは言えません。)
ハイレバレッジの場合は、リスク額の中に投資額が包含されてしまっているため、常に「危険」な状態といえます。
図4にこのリスクとレバレッジの関係を示しています。
買いポジションについては値下がりがリスクとなり、売りポジションは値上がりがリスクとなります。
FXにおいて最適な倍率を検討する場合、予想されるリスク額(平均値±2σ)に対して、これを超える投資額(証拠金額)が安全な投資の大前提となります。
では最適な倍率の具体的な検討は次回で。
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