2016年3月30日水曜日
ニッセイ外貨建て一時払い変額年金保険「ラップドリーム」の分析
2016/4/5
経費率等の詳細が分かりましたので試算値を修正しました。
2018/10/15
ニッセイ「ロングドリームGOLD2」の分析と評価
2018/11/5
ロングドリームGOLD、GOLD2と「市場価格調整率」の怖い関係
日本生命は、外貨建て一時払終身保険「ロングドリームGOLD」につづいて、外貨建て一時払い変額年金保険「ラップドリーム」を4月から三菱UFJ信託銀行の窓口で販売すると発表しました。
「ラップドリーム」の正式名称は、ニッセイ指定通貨建年金原資確定部分付変額年金保険です。
この2つの商品の違いは、「ロングドリームGOLD」は、外貨建ての債券(固定金利)に投資をしていますが、「ラップドリーム」は、外貨建ての固定金利商品に加え株式などの投資信託を上乗せしており、「ロングドリームGOLD」よりは少しリスクを取った商品と言えます。(その分だけ少し儲かるかも知れません。)
「ラップドリーム」の基本構造は、「定率部分(固定金利)」と「運用実績連動部分」の2つに分けられており、「定率部分」については「ロングドリームGOLD」と同様に確定利回りの商品になっています。
名称の「年金原資確定部分付」が示している内容が「定率部分」であり、これは外貨建ての基本保険金額(死亡保険金)と同額となるよう設定されています。
特約を付ければ死亡保険金を“円建”で保証することもできます。
例えば、豪ドルを選択した場合で、具体的にそれぞれの金額を推定すると、
前提:為替レート 1AUD=86円、利回り1.36%、1000万円を投資した場合、
注意
ロングドリームGOLDの利回りは2.56%ですから、ラップドリームの利回り1.36%との差の1.2%が銀行と保険会社の毎年の利益の源泉となっています。例えば定率部分の金額を870万円とすると、その1.2%は10.4万円となり、毎年この程度の金額が運用費用として差し引かれることになります。10年間の合計は約125万円にもなりますから、ロングドリームGOLDの7%(70万円)の控除と比較するとぼったくり度は悪くなったと言えます。なぜこのようにしたのかと言えば、銀行の窓販の際に手数料を開示しなくてはならなくなったので、「70万円いただきます。」というよりは「手数料は無料です。利回りは1.36%です。」という説明の方が騙しやすいからと思われます。気を付けましょう。
通貨交換 1000万円=1000万円÷86円=116,279AUD(基本保険金額:保障額)
(為替手数料58,140円は無視しています。)
運用額(元本) 116,279AUD(手数料は無料なのです。)
定率部分の金額 101,512AUD(116,279AUDを1.36%で割り引いた現在価値)
運用実績連動部分の金額 116,279AUD-101,512AUD=14,767AUD(投資信託部分)
「ラップドリーム」は、確定利回り商品に87%、投資信託に13%程度を配分しているものと思われます。(この配分比率は、定率部分の利回りにより変化し、利回りの低い米ドルの場合は投資信託の割合が13%よりも下がります。)
「定率部分」と「運用実績連動部分」の組み合わせには2種類あり、比較的低リスクの債券と株式の組み合わせか、よりリスクの高い不動産投資信託(REIT)とヘッジファンドの組み合わせのいずれかを選択することになります。
私の疑問
「年金マネー」の“ヘッジファンド離れ”が進んでいる今、なぜヘッジファンドなのか不思議なのですが、米国の大学財団の運用手法をパクッタ(手本とした)どこぞのヘッジファンドなのかな?。いずれにしろジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドでないことは確かだと思います。
素人を騙すにはヘッジファンドという響きは魅力的かも知れませんが、年金マネーに愛想をつかされたのですから、素人が投資してもたぶん儲けさせてくれないことに変わりは無いと思うのですが・・・
参考
ソロス・ファンド・マネジメントは、外部投資家から受け入れていた相対的に少額の投資資金を2011年末までに全額返還することを表明しています。
さて投資してから10年後、116,279AUDは定率部分で確保された上で投資信託部分の儲けが上乗せされることになります。
投資信託の利回りを5%とすると、毎年信託報酬として0.6%ぐらい取られますから、実質の利回りは5%-0.6%=4.4%となり、10年後の元本は1.54倍(154%)となります。
14,767AUD×1.54=22,741AUD
そうすると元本は、
116,279AUD+22,741AUD=139,020AUD(投資元本の119.6%=戻し率)
ちなみに1000万円をロングドリームGOLDに投資し、利回り2.56%で運用すると
7%控除後の投資元本 108,140AUD
10年後のロングドリームGOLDの満期金額は139,240AUD
139,240AUD >139,020AUD(ラップドリーム)
これってちょっとヤバイかも?
投資信託の利回りが5%ではロングドリームGOLDの方が儲かります。
ラップドリームの投信部分の利回りは6%以上ないとロングドリームGOLDに勝てません。
以上の関係をグラフにしてみました。
ラップドリームの投信の利回りは5%と仮定しています。
では10年後のラップドリームが139,020AUDとなったとして、
10年後の為替レートが1AUD=100円(円安)なら、
139,020AUD×100円=13,902,000円(約390万円の儲け)
運悪く為替レートが1AUD=75円(円高)なら、
139,020AUD×75円=10,426,500円(約43万円の儲け)
注意
○為替手数料69,510円及び為替差益への課税については無視しています。
○以上については推定値を元にして試算したものであり、必ずしも正確な値ではありません。
さてこの商品はおすすめかと言えば、投信の運用次第で「ロングドリームGOLD」よりもチョビット儲かるかも知れない商品なのですが、わざわざ高い手数料を払って保険会社から投資信託を買うことはないと思います。
既に「ロングドリームGOLD」を買っているのなら、投資信託部分は東証に上場されているSPDR® S&P 500® ETF(1557)をネット証券で買う方がお得になります。
参考
バートン・マルキールも「ウォール街のランダム・ウォーカー(11版)」の中で、一時払い変額年金保険について次のように書いています。
「変額年金保険商品はやめた方がいい。とりわけ保険会社が販売するものは非常に高くつく。一時払い変額年金保険商品の本質は、死亡保険付きの投資信託と考えればいい。」
参考
つみたてNISA・・・金融庁がお勧めする老後資金作りの決定版
一時払い外貨建て保険を買ってはいけない明確な理由
ニッセイの外貨建て終身保険(ロングドリームGOLD)の評価
投資は自己責任でお願いします。
投資や家計全般のご相談についてはこちらをご覧ください。