保有資産の売り時はいつなのか?
藤巻健史氏は、
「為替の取引で参加者全員が考えていることは、なるべく安く買い、なるべく高く売るということです。これは金融に限らずすべてのマーケットの参加者に共通の動機です。」
と書いています。
すべてのマーケットとは、市場(しじょう)でも、市場(いちば)でも同じなので、つまり八百屋さんも野菜いちばで安く仕入れ、お客さんには高く売りたいと考えていますから、投資も商売も皆儲けたいと思っているのです。
そこで問題なのは、いつが安いのか。いつが高値なのかということです。
これは永遠のテーマなのですが、この難問に対して投資の世界の二大流派「ファンダメンタル価値学派」と「砂上の楼閣学派」は、吾こそは未来が見える水晶玉を持っていると高らかに宣伝しています。(たぶん一部の人たちなのでしょうが、雑誌やネット広告ではこのいかがわしい輩たちで溢れかえっています。)
しかしこうした人たちは結局のところ「懲りない連中」であるというのが大方の良識ある専門家の判断だと思われます。
参考
<ファンダメンタル分析派>
投資先に関するあらゆるデーターを集め分析するものの、努力の割には成果が得られない手法のこと。
<砂上の楼閣派>
心理的要素を重視し、過去の株価チャートから未来を予測しようとするもので、いずれにしろ理論的裏付けのないやり方を用い、占い師や宗教家のやり方と同種。
したがって私も、バートン・マルキール先生の「ウォール街のランダム・ウォーカー(株式投資の不滅の真理)」の教えに従って、「未来は、誰にも分からない。」と考えています。
今現在も、売買のタイミングを正確に予測できる理論は見つかっていませんし、その理論がノーベル賞を貰ったという記録もありません。
あのケインズですら投資で失敗をしていますし、ウォーレン・バフェット氏も100戦100勝したわけでもありません。
参考
「失敗から学んだ投資家ケインズの足跡」
ちなみにケインズは、投資対象をいくら分析しても投資成果には繋がらず、それよりも投資家たちがどのように行動するのかを毎朝30分だけ考えたと言われています。
著名投資家ウォーレン・バフェット氏の率いる投資会社バークシャー・ハザウェイの名前の由来は、もともとはバフェット氏が買収した毛織物会社でしたが、この投資は大失敗し、結局残ったのはその名前だけでした。
このような状況を踏まえると、500円で買った雑誌や会社四季報の推奨銘柄を信じて株を買う人は果たして賢い人なのでしょうか?
とは言うものの、確かに「億り人」がいるのは事実です。
でも投資家が1000万人もいれば、確率として100人や200人ぐらいの「億り人」がいても不思議ではありません。
参考
標準偏差で、±4σ以下の範囲に含まれる確率が99.99%ですから、投資家が1000万人いた場合、この中に含まれない人(超ラッキーな人)が500人もいることになります。
宝くじだって毎回億り人(当選者)が出ますから、確率的には投資の世界に億り人は居て当然なのですが、その人の投資手法に普遍性があると考えるのは間違いです。
「億り人」について、そのすべてがファンドマネージャー(プロの投資家)であるならば、「ファンダメンタル分析派」を信じてもよいかも知れませんが、「億り人」のほとんどが個人投資家っていうのは、やっぱり「まぐれ当たり」と考えるのが正しい判断と言えそうです。
参考
過去に雑誌などでもてはやされた人たちが今はどうなったのか・・・
たぶん昔の名声で人を集め、投資セミナーの講師などで日銭を稼ぐのがせいぜいなのでは・・・
以上より、私の結論は、未来を的確に予測し、タイミングで儲けようとするのはファンドマネージャーなどのプロの投資家でもムリだと断言します。
この結論はプロの世界では常識です。
ですからHFTがもてはやされるのです。つまり投資のプロでも未来は予測できないので、イベントに対するクイックレスポンスでしか儲けられないのです。
未来が予測できないとすると、では売り時をどのように判断したらよいのか?
一般にFPとか、投資の専門家は「お金が必要となったら、売りましょう。」とアドバイスをしています。
まあ、そりゃ~そうだ!
っていうことは、何時でも売り時ということなの?
皆さんは、「いつ売ったら儲かるのか?」を知りたがっているのに、お金が必要ならいつでもいいですよって・・・答えになってない気がするのは私ばかりではないと思うのですが。
そこで賢い(?)投資家はどうしたら良いのかを真剣に考えた結果・・・(^^;)
川島FPのアドバイスは次のとおりです。
1 適切なポートフォリオが大前提
この問題の本質は、投資額すべてが株式などのリスク資産となっているために、解約時期の判断ができなくなっていることなのです。
リスク資産は常に大きく変動しているため、タイミングによっては大きな損失覚悟で売らざるを得ない場合があります。
また、保有資産が値上がりしていて、待てばもっと値が上がる状況でも売らなくてはならない場合に悔しい思いをされることもあるのではないでしょうか。
そこでもし、あなたのポートフォリオがリスク資産30%、安全資産50%、流動資産20%だった場合、保有資産の70%は今すぐ現金化するのに大きな問題もなく、淡々と解約できるのではないでしょうか。
取りあえず現金が必要なら銀行預金(流動資産)から100万円を下ろすとか、個人向け国債(安全資産)を一部解約し、300万円を用立てるとか、多様な対応を躊躇することなく決断できます。
したがって、以上のように適切なポートフォリオとなっていれば、リスク資産は解約することなく、いつでも現金を準備できますから、相場へのリスク対応とともに人生のリスク対応においてもバランスの取れたポートフォリオがもっともおすすめなのです。
そしてリスク資産は、リスクレベル(金額)を抑えつつ、長期で保有し続けるのがもっとも賢い資産運用法と考えます。
株式などのリスク資産は、長期保有により大きな果実を得ることができます。
投資のリターンは、タイミングではなく長期保有で得るのが王道なのです。
2 ではリスク資産はいつ売るのか?
セカンドライフでは、資産を取り崩しながら生活することになります。
そうすると、資産全体の目減りとともにリスク資産の割合が増大して来ます。
そこで解約時期の目安として、運用資産全体に占めるリスク資産の割合が30~50%になって来たら、一部を解約しリバランスするのがよいでしょう。(リスク資産を減らし、安全資産を増やす。)
解約の目的は、「リスクを下げるため」のリバランスとお考えください。
でも普通の人は、儲かる時期を必死で考え、「今だ!」と言うときに解約しようとします。
そうすると、そのときに儲けたお金(あぶく銭)でまた一勝負などと「欲」が芽生えますから、リバランスにおいては淡々と進め、天気の良い晴れやかな気分の日に「事務的」に処理することをおすすめします。
ベストな売り時が分かる人などいないのですから、いつ売っても必ず後悔はするのです。
ですから誕生日に売るとか、晴れた日に売るとか、理由は何でもよいので、わずかな儲けなど気にせず、適当な日に売ってしまえばよいのです。
本間宗久翁”相場三昧伝”より
○安きところにて買い、高きところにて売るべしと心掛けては、宜しからず。
○米の高下は天性自然の理にて高下するものなれば、極めて上がる下がると定め難きものなり。この道不案内の人は迂闊にこの商いすべからず。
○数月思い入れよく、八九分通り仕当たり候節、必ず勝ちに乗るべからず。唯無難に取り留むることを専らにすべし。必ず必ず、欲を深くし迷うべからず。
その1