2016年6月6日月曜日
リーマンショックで損したもの、得したもの(その1)
1 全般の状況
2008年9月15日(月)に米国の大手証券会社リーマン・ブラザーズが倒産しました。
原因は、2007年夏から2008年にかけて、米国の住宅バブルが崩壊するとともにサブプライム・ショックが発生したことが発端となっています。
サブプライム・ショックとは、住宅ローンの中でも安定した職業に付き、収入も多い優良な顧客(プライム顧客)よりも下層(サブプライム)の顧客に対し貸し出されたサブプライムローン(住宅債券)にデフォルト(債務不履行)が頻発し、その波及としてMBS(Mortgage Backed Security、住宅ローン債権担保証券)を通じ全世界へと信用不安が広がったことを指します。
MBSとは、高度の金融技術により低格付けの住宅債券とさまざまな債券とを複雑に組み合わせ、格付けがAAA(最上級)の高利回り商品に変身させてしまった有毒証券のことです。
参考
バートン・マルキールは、MBSについて「より正確には金融工学というより「金融錬金術」と呼ぶべきだろう。」と書いています。
リーマン・ブラザーズでは、住宅バブルが崩壊するまではサブプライムローンを大量に購入し、MBSに仕立て上げ、これを世界中に売りさばいていたのです。
しかし、サブプライム・ショックの拡大と共についにMBSの販売も困難となり、抱えていたサブプライムローンなどの不良債権が64兆円にも達したため、リーマン・ブラザーズはついに倒産に至りました。
MBSの中身については複雑すぎて、その価格が分かるのは組成した者しかいないと言われています。
つまりこの商品のプライシング(値付け)が困難なため第3者間の売買ができず、商品としては極めて流動性が低く、売買が枯渇しやすい特質があります。
参考
日銀レポート「住宅ローン債権担保証券のプライシング手法について」
リーマンショックがなぜ起こったのかを考えると、リーマン・ブラザーズが単に投資で失敗しただけなら世界的規模でこれほどのショックにはなっていません。
リーマンショックの本質部分とは、中身が全く分からないMBSという商品の欠陥とこの商品に安易にAAAを付けた格付け会社の怠慢によって世界中の投資家が混乱に巻き込まれた事件だったと考えられます。
さてリーマンショックから早8年近く経過しましたが、安倍総理もご心配されている?ように「リーマンショックがまたやって来る」かも知れません。
そこで、やがて来るショックに個人投資家はいかに備えるべきかを考える上で参考となるデータ(ファクト)を投稿しますのでご参考としてください。
2 リーマンショックで損したもの
株式については深刻な影響が出ています。
グラフには日経平均とニューヨークDOWの推移状況を示しています。
それぞれのグラフは、2008年1月4日の指数を100%として無次元化し描いています。(以下のグラフはすべて同様に作成しています。)
2008年9月12日(金)の時点で日経平均は83.1%、NY DOWは89.2%でしたが、いずれの指数も暴落し、2009年3月6日には、日経平均が48.8%、NY DOWが51.8%まで下がっています。
つまり日経平均は34.3%の損失、NY DOWは37.4%の損失となっています。
(100万円を投資していたとすると約34~37万円の損失ですから、かなり深刻な状況です。)
その後NY DOWは堅調に回復し、約1年9ヶ月後の2010年12月にはリーマンショック直前のレベルまで戻しています。(その間もじわじわと値を戻していますから、損切り出来なかった投資家もじっと待てる状況にはあったのです。)
一方日経平均は長期低迷が続き、第二次阿倍政権が発足し日銀総裁に黒田氏を指名した直後の2013年3月8日にやっとリーマンショック直前のレベルに戻しています。
この間、実に4年6月もの時間が経過してしまいました。
損切り出来なかった投資家の多くは、この長すぎる低迷期においてこらえきれず保有株を売ってしまったことでしょう。そしてすばらしいアベノミクス景気には乗り遅れた・・・かも知れませんね。
長期にわたる東京市場低迷の責任は民主党政権の失政と白川日銀総裁の無策(愚策)にあることは明らかです。
金融・財政政策は、ロバート・ルービンやヘンリー・ポールソンのように投資銀行などの経営者からリクルートされたプロ中のプロにまかせれば株価は順調に上がるのです。
国の経済にとって重要な金融・財政政策を素人に任せてはいけないのです。
ついでに言えば頭の固い、税金を搾ることしか考えない、そして経済をまったく理解できない役人にも任せてはいけません。
ところでNY DOW銘柄のアップルやインテル、マイクロソフトがなんでMBSやサブプライム・ショックに関連して株価を下げたのか私にはよく分からないのですが、「取りあえず売っとく」投資家が多かったのではないでしょうか。
そうだとすると投機家に近い投資家としては絶好の買い場かも知れませんね。
でも日経平均については、暴落したときの回復力が非常に弱い(世界的に日本株の人気が無い)ので様子見がよいと思われます。情けない・・・
リーマンショックで損したもの、得したもの(その2)
リーマンショックで損したもの、得したもの(その3)
投資や家計全般のご相談についてはこちらをご覧ください。