2016年6月6日月曜日

リーマンショックで損したもの、得したもの(その2)


3 リーマンショックで得したもの

(1)債券

 株式がやられても債券はしっかりしていました。

グラフは、「iシェアーズ®・コア 米国総合債券市場 ETF(AGG)」の基準価額の推移を示しています。


リーマンショックもなんのその、AGGのその後の平均利回りは4.4%と右肩上がりで推移しています。

またグラフの凸凹もNY DOWに比較し少なく、ボラティリティ(Volatility価格の変動度合い)が非常に小さいことが分かります。

ちなみにこの間(2008/1/4~2016/4/12)のそれぞれのリスク(標準偏差 σ)は、

AGG      σ=13.2%
日経平均     σ=26.3%
NY DOW     σ=20.3%

AGGのσが13.2%と意外に高めとなっていますが、これは基準価額が上昇した影響によるもので、定期預金のようにこの期間をまっすぐな直線(グラフ参照)として引いてもσは12.5%ありますから、AGGのリスクは定期預金と同じレベルと言えます。


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< 標準偏差の値とグラフに現れた変動幅の感覚的な整合性の検討 >

投資商品のリスクは一般に標準偏差が使われますが、定期預金のリスクが12.5%というのはしっくり来ない感じがします。

期間の初め値と終値に差があれば、定期預金のようにその間価格が一律に上昇したとしても標準偏差は0にはなりません。

価格が一律で上昇するときの標準偏差σを基礎的リスク(Σ)と定義し、その直線からの変動分つまりVolatilityだけに注目した変動リスクσ'に分けて考えると、次のような式が作れます。

σ=Σ+σ'

前記の定期預金の場合Σ=12.5%ですから、σ=12.5%より変動リスクはσ'=0%となり感覚的に納得できる値が得られます。

そうするとAGGの変動リスクσ'は、

σ'=13.2%-12.5%=0.7%

変動リスクσ'が0.7%ですからグラフの見た目とも整合し、AGGは定期預金と同じ程度のリスクであることを定量的に表すことができます。

参考

基礎的リスク(Σ)は傾きが一定の場合(一次関数)のリスクであり、期間の初め値と終値に差がある(傾きが大きい)ほどΣ値は大きくなります。また期間が2倍になるとΣ値も2倍になります。

一方σ'は期間の長短に影響されません。

ちなみに前記の株式指数の基礎的リスクΣは、2008/1/4~2016/4/12の期間について計算すると、

日経平均 Σ=2.4% (傾き小)
NY DOW  Σ=11.1% (傾き大)

これより変動リスクσ'は、

日経平均 σ'=26.3%-2.4%=23.9%
NY DOW  σ'=20.3%-11.1%=9.2%

これより日経平均は、NY DOWよりも2.6倍も変動していると言えます。

リーマンショック後NY DOWは右肩上がりの傾向が顕著に見られますが、一方日経平均は長期間低迷した後一気にNY DOWのレベルまで急上昇していることから、ジェットコースターに乗っている気分でこれを眺めるとハラハラドキドキのスリルが2.6倍という感じも納得できるのでは。

株式指数と同様に為替について2008/1/4~2016/5/31の期間のΣ、σ'を計算すると、

Σ=0.7% (傾き小)
σ=16.2%
σ'=16.2%-0.7%=15.5%

為替は株式のように配当が無く成長することはありませんから、基礎的リスクΣはほぼ0%であり、σ≒σ'と考えてよいでしょう。

以上より、単純な標準偏差でリスクを評価するよりも、変動リスクσ'で評価した方がグラフを見たときのうねり具合から受ける印象に近い値が得られると思いますがいかがでしょうか。

このσ'は期間の長短に影響されませんから、投資商品の本質的なVolatilityの評価に適していると考えます。

注意
1年間の最大の損失額を推定する場合には標準偏差を使った方が適切です。

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前のグラフについてリーマンショック前後の短期間だけ取り出したのが次のグラフです。


AGGは、2008年9月15日の103%から1ヶ月後の10月14日98%まで下がりましたが、すぐに回復し12月29日には105%まで急上昇、その後は長期間安定して右肩上がりに伸びています。

債券といえどもやはり一時的には売られるようですが、株式を売った投資家がすぐに目を付けるのは「債券」ということがこのグラフから読み取れます。

またこのグラフより、AGGは2008年前半は低迷していましたが、リーマンショックによる信用不安を切っ掛けとして安心安全な債券投資に人気が出たことが分かります。(しかもかなり長期的に人気が出たようです。)


したがってAGGは、リーマンショックで得をしたと言えます。


一方日本国債はどうでしょう。


このグラフは、長期金利から新発債の価格を推定しグラフにしたものです。(このグラフは無次元化せずそのままの単位で表示しています。)

2008年9月12日の価格85.98円が16日に86.46円に値上がり(0.6%UP)したもののしばらくはこの近辺でうろうろ、その後年末にかけてじわじわと上昇し、88.96円まで値上がり(3.5%UP)しています。

しかしその後、金利は0%目指してじわじわ低下し、国債価格は額面価格を目指してじわじわ上昇していますから、リーマンショックによる影響と言うよりも底流は超大口顧客である日銀の政策次第のようです。

蛇足ですがこのグラフの右上を見ると、黒田バズーカⅢによりマイナス金利が導入されたため、国債価格は100円を超えています。

したがって銀行は政府から国債を101円で買い、10年後の満期に100円を受け取ることになります。

なんとバカらしい!

注意
銀行はそんなにバカではなく、買ってすぐに右から左えと日銀に101円よりも高く売りつけています。でも日銀はいつまでこんなばかげたことを続けるのでしょう?



リーマンショックで損したもの、得したもの(その1)

リーマンショックで損したもの、得したもの(その3)