2015年6月4日木曜日

超簡単・・・お金の運用法(その4)



海外ETFには優良なものが多くおすすめなのですが、一方ご相談者の多くが為替の影響をご心配されます。

このご心配に対する私の説明は次のとおりです。

以前の投稿で「為替リスクを取ってまで米国株を買うべきか ?」に書きましたが、ニューヨークDOWと為替の相関は低く(あまり関係がない)、DOWのリスク(約11%)と為替のリスク(約10%)を合わせたリスクは、合計したリスク21%よりも低く14%程度であり、結論としてTOPIXのリスク(16.75%)と大差ないと分析しています。

この点についてジェレミー・シーゲルも「株式投資(Stocks for the Long Run)」の中で「外国株式を保有することで生じるトータルのリスクは、ローカルリスクと外国為替リスクを足し合わせたものよりも小さい。」と言っています。

この理由としてジェレミー・シーゲルは「異なるリスク同士が完全には相関しておらず、ローカルリスクと外国為替リスクがお互いのリスクを相殺することが多い。」と分析しています。

注意
ただしこの分析は長期投資についてであり、短期的には当てはまりません。

そして彼のアドバイスは、長期投資において「為替ヘッジは必要なく、ときとして不利益をもたらす。」「長期投資で為替リスクのヘッジは自滅行為」と書いています。

参考
外貨投資に為替ヘッジを付けるべきか?


したがってリスクが10%~30%でも大丈夫な方には、長期投資を前提とすれば為替は「気にしなくてよい。」のです。

この考えによりETFの選び方は、その3で記したように国内ファンドであろうと海外ファンドであろうととにかく「広く」「安く」が判断基準となります。

「広く」とは国内ファンド・海外ファンドにかかわらずとにかく広く分散されたもの、そして信託報酬はできるだけ「安い」ものを選びましょう。

それでも心配・・・と言われる方についてはそのための方策も以下でご紹介します。


さてポートフォリオ(ETFの組み合わせ)をどうすべきかについて参考となるデータを次に示します。

基本は株式と債券の組み合わせとなります。

略称の説明は次のとおりです。

$/¥:為替レート(ドル円)
JGB :日本国債(固定10年)

この表はそれぞれのETF、為替レート、日本国債について相関をとったものです。


データ期間は2010年7月から2015年6月までの5年間です。
(MAXIS MSCIコクサイは募集開始の2010年11月からです。)

分散投資において最も大切な点は、それぞれの商品の価格の変動が同じような動きをしないものを組み合わせることです。

同じ動き方かどうかは相関係数で定量的に判断できます。

相関係数が1ならばまったく同じ動き方・・・組み合わせとしては最悪
相関係数が0ならば無関係な動き方・・・・・よい組み合わせ
相関係数が-1ならばまったく逆方向の動き方・・・もっとも理想的な組み合わせ


この表よりVT-AGGの組み合わせは、相関が-0.017ともっとも低いレベルでありよい組み合わせと言えます。

(その3ではVT-AGGの相関を0.685としていますが、より長期では相関が低くなっています。)

MAXIS TOPIX-AGGの組み合わせも相関が-0.036ですからとてもよい組み合わせです。

為替リスクを気にされる方は信託報酬の高さはあるものの、こちらの組み合わせがよいかも知れません。

MAXIS MSCIコクサイ-AGGの組み合わせもよいでしょう。

分散効果から考えると、投資対象の銘柄数の多さからは
TOPIX < MSCIコクサイ < VT

となりますから、「広く」「安く」の基準では、やはりVTを組み合わせることがよいと思います。


最後に、投資先がすべて海外のファンドで本当に大丈夫と思われている方への私のアドバイスは次のとおりです。

○すでに定年となった方
基本は守りの資産となりますから、あまり利回りを追求されるよりは(その2)をご参考としてください。

それでも一部は利回りも得たい方は、投資額の20%を目安に前記VT-AGGの組み合わせをおすすめします。


○まだ働き盛りの方

すこし横道に逸れますが、年収500万円の人(あなた)の資産価値はDCF法(Discounted Cash Flow法)により算出できます。

食費・住居費などの経費を260万円とすると、資産としてのあなたが1年間に稼ぎ出すリターンは240万円となりますから、割引率を3%とすると、

240万円÷0.03=8000万円

割引率が2%なら、
240万円÷0.02=1億2000万円

俺の価値はもっと高いよ!  と言われそうですが1億円から2億円ぐらい(円ベース)と見積られます。

したがって毎年240万円を稼ぐ資産をあなたは持っておられるので、数百万円程度の投資額をすべて海外ファンドとしてもあまり心配する必要はありません。(でも結婚資金や、住宅資金、教育費など使う予定のあるお金はしっかり確保した上で余裕資金があるのなら投資をしましょう。)

具体例として、

為替レート1ドル125円の時に500万円で海外ETFを買った場合、外貨ベースでは約4万ドルの資産となります。

1年後、為替レートが1ドル100円の円高となった場合、この4万ドルの資産価値は400万円となり、100万円の損失となります。

しかしあなたが得ている240万円はドルベースで見ると、19,200ドルから24,000ドルになり、4,800ドル増えますから見かけ上48万円増えたことになります。

したがってトータルの損失は52万円程度となります。(ETFのリターンが5%とすると利益額が20万円となり、損失額は約32万円程度に減ります。)

ここで大切な点は投資したお金だけを見るのではなく、今持っている資産のすべてをお金に換算してリターンを考えることなのです。

また一方で、500万円も投資して、1年間のリターンが25万円程度ですから、投資に血道を上げるよりも残業を一生懸命にした方がリスクがなく確実に儲かるという事実です。


あなた自身の価値は、思っているよりも遙かに高いのです。



超簡単・・・お金の運用法(その1

超簡単・・・お金の運用法(その2

超簡単・・・お金の運用法(その3



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