2014年12月18日木曜日

通貨選択型ハイ・イールド債券投信はお勧めか?(号外)

野村證券の運用報告書によるとグラフのように毎月分配型の豪ドルコース、ブラジルレアルコースともに2010年以降長期低落傾向が続いています。



一時は日の出の勢いのあった通貨選択型ハイ・イールド債券投信ですが、ここに来て息の根を止められそうな状況となっています。

その原因は資源国の通貨安と米国のジャンク債市場の危機です。

参考
ハイ・イールド債券はハイリスク・ハイリターンの債券で、一般の投資家が買う物ではないためジャンク債(がらくた債券)と呼ばれています。


いずれの事態もその背景は、産油国が米国に対してしかけたシェールガス潰しの低価格戦略にあります。

2015/2/26
朝日新聞「サウジが原油相場は「沈静化」と表明、60ドル容認を示唆か


現在原油価格はWTIが1バレル60ドル(12月18日現在$56)を切っています。
WTIは今年の半ばまでは100ドル台でしたから、ほんの数ヶ月で40%以上も暴落しています。

原油価格暴落のきっかけはOPECが減産をせず、世界的にエネルギー供給が過剰となったためです。

OPECが減産をしなかった理由は明らかに米国のシェールガス潰しにあります。

米国はシェールガス革命により今やエネルギー輸入国から輸出国になろうとしており、これまで世界のエネルギー供給の主役だったOPECが脅威にさらされています。

シェールガスの採掘は石油開発事業と比べると比較的短期間(数週間)、しかも小規模投資(150万ドル)で開発できるため、この開発にわれもわれもと殺到し今やゴールドラッシュの様相となっています。

しかしシェールガス採掘の採算ラインは1バレル60~100ドルぐらい(新規参入組ほど高コスト)ですから、WTIが1バレル60ドルを切ると米国内のシェールガス採掘業者のほとんどが採算割れ状態となります。

OPECのネライはそこにあります。

シェールガス採掘業者は資金調達をジャンク債市場でおこなっています。
ジャンク債市場(市場規模は約34兆円)では、ゴールドラッシュ状態のエネルギー企業のシェアが16%もあり、それを日本のハイ・イールド債券投信が買っています。

その2で書きましたように「野村米国ハイ・イールド債券投信(通貨選択型)」の投資先のトップは石油・ガスです。

いまのような原油価格が続いた場合、今後数年でエネルギー関連のジャンク債の40%が債務不履行となる可能性があると言われています。

参考
2015/7/14 bloomberg 記事
死に物狂いジャンク債投資家、何より欲しいのは「流動性」


一方ロシアを始め資源国の通貨安が激しさを増しています。
原因はもちろん原油価格の暴落にあります。

原油をはじめ、天然ガス、石炭などエネルギー関連の資源国の通貨は軒並みレートが下がっています。


高利回りのジャンク債、高金利の新興国通貨により我が世の春を謳歌していた通貨選択型ハイ・イールド債券投信も、2重3重の巻き戻しにより息の根を止められる時期が迫っているようです。



通貨選択型ハイ・イールド債券投信はお勧めか?(その1)

通貨選択型ハイ・イールド債券投信はお勧めか?(その2)

通貨選択型ハイ・イールド債券投信はお勧めか?(その3)

ブラジルレアルに興味のある方へ

高金利通貨に興味のある方へ(その1)

高金利通貨に興味のある方へ(その2)


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