最近円安の進行と共に当ブログでも「通貨選択型のハイ・イールド債券投信」の検索が増えています。
人気の「野村米国ハイ・イールド債券投信(ブラジルレアルコース)毎月分配型」の運用報告書によると、このファンドの基準価額は12年12月の7,790円からV字回復し8,512円(5月17日現在9,697円)となったことを誇らしく書いています。
野村證券にとっては、たこ足配当(特別分配金=元本の払い戻し)の状況からやっと抜け出せ、またぞろ販売攻勢(乗り換えの販売攻勢?)を仕掛けているのかも知れません。
でもこのV字回復はNCRAM社(ノムラ・コーポレート・リサーチ・アンド・アセット・マネージメント・インク)の運用が良かった結果なのかと言うと、けっしてそうではなく、「アベノミクス」という神風(円安)が吹いたことが原因です。
この期間に米ドルは円に対して9%も値上がりしており、当然NCRAM社は何もしなくても米国ハイ・イールド債券投信は9%値上がりしたことになります。
そうは言うものの、米ドルコース(通貨選択なし)のこの期間のリターンは16%ありますから、多少は運用の腕も良かったのかも知れませんが、その成果の大部分はFRBのQE3にあると見るのが大方のエコノミストの考え方です。
なぜならニューヨークDOWはこの期間に18%も値上がりし、史上最高値を更新しています。
一方問題なのは、この期間のブラジルレアルコース毎月分配型のリターンが9.3%しかないことです。
高金利通貨のプレミアムがまったくなかったことになります。
エマージング通貨のリスクをとった結果が米ドルコース(通貨選択なし)に負けてしまっています。
「野村米国ハイ・イールド債券投信」8本の設定来の期間収益率を見てみましょう。
(表はクリックすると拡大します。)
1位は豪ドルコース(年2回分配)、2位がブラジルレアルコース(年2回分配)となっています。
ブラジルレアルコース(毎月分配)は高金利通貨の中ではやはり最下位の6位となっています。
ブラジルレアルコース(毎月分配)の累計配当金は10,210円もあり目を引きますが、そのかなりの部分がたこ足配当(特別配当)だったため体力を消耗(元本の損耗)したことによりこのような惨めな結果となってしまったのです。
この毎月分配型の純資産4,289億円は高金利通貨の中ではダントツの1位なのですが、これを買った(買わされた)人は分配金だけしか見ていないようなので、基準価額のことをよく分かっていないと思われます。
米ドルコースは、QE2及びQE3の影響によりドル安が続いたため、設定来では高金利通貨に負けてしまっていますが、ドル復活と共に日の出の勢いで儲かるようになってきました。
対円での米ドル及びブラジルレアルの為替の動きを見てみましょう。
(グラフはクリックすると拡大します。)
このグラフの縦軸は、表示期間の平均為替レートを100%としています。
米ドルは2008年以降長期低下傾向にありましたが、2012年10月以降急激に復活し、5月12日現在113%に達しています。
ブラジルレアルも復活しつつありますが104%と出遅れています。
対米ドルでの高金利通貨の為替の動きを見てみましょう。
(グラフはクリックすると拡大します。)
2011年7月以降、3通貨の強弱が明確に出ています。
豪ドル(AUD/USD)は対米ドルで常に110%ラインをキープしており、その結果「豪ドルコース(年2回分配)」が運用成績で1位となっています。
ブラジルレアル及び南アランドはともに100%ライン以下に沈み込んでおり、対米ドルでの弱さが目立ちます。
特に南アランドは長期低下傾向に歯止めがかからず、ずるずると下がり続けています。
ユーロ危機のとばっちりを受けたためのようです。
さて以上より私のアドバイスは、「野村米国ハイ・イールド債券投信(通貨選択型)」が儲かるようになったのは、この商品がすばらしいのではなく「神風」が吹いたからなので、同じ「神風」の恩恵により儲けるのならもっとリスクの小さな商品、例えばこちらなどがお勧めです。
高金利通貨に興味のある方へ(その1)
通貨選択型ハイ・イールド債券投信はお勧めか?(その2)
ブラジルレアルに興味のある方へ
投資や家計全般のご相談についてはこちらをご覧ください。