2010年12月10日金曜日
通貨選択型ハイ・イールド債券投信はお勧めか?(その3)
(グラフはクリックすると拡大します。)
2014/12/18
通貨選択型ハイ・イールド債券投信はお勧めか?(号外)
お問い合わせが多いので、現在の私の分析をUPします。
この夏、絶大な人気を誇った「野村米国ハイ・イールド債券投信 (通貨選択型) ブラジルレアルコース (毎月分配型)」にも陰りが見え始めました。
9月現在の基準価額推移グラフおよび分配金実績では、基準価額が7月上旬をピークに急減しています。
純資産総額も7月以来30%近くの流出となっています。
しかし毎月の分配金はそれでも250円を払い続けています。
利益が出ていませんから、元本の食いつぶしである「特別分配金」が毎月支払われていることになります。
たぶん分配金を下げてしまったらファンドからの流出が怒濤のように発生しそうなので、投資家は「特別分配金」がなんなのか分からないだろうということで250円を維持しているようです。
なぜこのような状況となったのかは「為替」の影響が主因と思われます。
第1にユーロ圏のソブリンリスクによるドル高、第2に高金利通貨の金利引き下げまたはその予想、第3に超円高が原因と考えられます。
米ドル → 高金利通貨の為替損益と、高金利通貨 → 円の為替損益の2重の損益について掛け合わせたトータルの為替損益の推移を通貨別にグラフにしてみました。(グラフ参照)
100%のラインはこの期間の平均値です。
高金利通貨に対してドル高(高金利通貨安)となると為替差損が発生し、また円高(高金利通貨安)となっても為替差損が発生します。
このダブルの為替損益を掛け合わせ1本の折れ線としてグラフに示しています。
豪ドルは5月以来19%の為替差損、ブラジル・レアルは26%の差損、南ア・ランドは31%の差損となっています。
1年~2年分の利益が吹っ飛んでしまった状況と言えます。
この原因は、ユーロ圏のソブリンリスクですから、この問題が落ち着くまではこの傾向が続くと思われます。
注1
投資対象である米国ハイ・イールド債券市場も世界経済の先行き懸念から大きく下落しています。(したがって前記「ダブルの為替による下落」とこの「債券価格の下落」が掛け合わされた結果、現在はトリプル安の状況です。)
注2
不思議なことに野村證券の月次レポートには「為替」に関する内容が報告されていません。
株式、債券のみの現況が報告されています。
これは、つまり「為替ヘッジ手法(通貨)」を選択したのは「契約者」であり、ファンドとしの運用責任は「ない」と言うことです。
したがって為替が損であろうが得であろうが関知しないとの立場と私は理解しました。
この投信はジャンク債に投資するとともに為替エクスポージャーがあり、しかも安全サイドの為替ヘッジではない手法によりリターンを得ようとするものですから、為替の損益を報告しないというのはいかがなものでしょう。
少なくともお客様の主要な損益の源泉にかかわることについて月次レポートで「無視」はないでしょうと私は考えます。
さて現在この投信を契約している方はどうすべきかですが、基準価額が9月に入り1万円を切っているので早めに見切りを付けた方が良いと思います。
他方、ユーロ圏のソブリンリスクが落ち着いた後には、「日本」のソブリンリスクに焦点が当たる可能性がありますから、超円安をじっと待つ戦略もよいかも知れません。
参考として「モーニングスターのファンド評価」はこちらをご覧ください。
後知恵で多少気が引けますが、プロの評価もいい加減なのがよく分かります。
しかし現状の資金流出が続いたら、1年もしない内にファンド自体が早期償還という最悪の事態となってしまう可能性もあります。
未来は分かりませんが、「通貨選択型」ファンドが困難な時期に差し掛かったことは確かなようです。
投資は自己責任でお願いします。
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