今の年金制度は2004年に「100年安心」して運営できるシステムとして作られた制度のはずなのですが・・・。
しかしその実体は、マクロ経済スライド制は機能せず、国庫負担1/2の財源の手当は場当たり的ですし、今では年金制度自体の改革が議論されるに至っています。
若い人たちは、こうした年金制度に対する不信感から保険料を未納者のままにしている人が多く、罰則もないため(障害基礎年金などの給付の制限があります。)年金財政をますます困難な状況にさせています。
一方、そうした若い世代の人たちも自分たちの将来はどうなるのかとの不安感も広がっており、このブログにおいても年金保険関係のページの閲覧数が極めて多くなっています。
したがって銀行、郵貯、生保そしてFPも年金保険を一生懸命に売り込んでいます。
しかし私はFPとして年金保険などは積極的にはお勧めしません。
その理由は公的な制度を最大限活用することが最も「お得」になるからです。
この最も「お得」になる方法をだれも(遺憾ながら多くのFPも)アピールしていないので私がこのブログで全国民に(^^;)お知らせすることにしました。
本来は「国」がしなければならない内容と考えますが、民業を圧迫してはいけないという理由から「制度は作るが利用するかしないかは国民の自由」と言ってほったらかしというのが現状です。
その一方で民業では老後資金の準備としてはまったく「損」な商品ばかりが売られています。
明治安田生命では主として債券(長期国債)の運用により3%程度の安定した利回りを確保していますが、契約者に約束する利回り(予定利率)は1.5%以下(実質利回りは0.5%程度)なので、保険会社が儲けても契約者の儲けがそれを上回ることはありません。
国の年金制度への不信と将来への不安から「年金難民」がどんどん増加しています。
FPとしてそのような「年金難民」の方へ適切なアドバイスをすることは大切な任務と考えています。
年金難民の方の「不安」の発端はつまるところ「年金制度」が複雑すぎて理解困難なところにあるのではないでしょうか。
この制度に対する理解が進めば「お得感」も理解してもらえるものと考えますので、そこから始めたいと思います。
1 現在の年金制度
(1)サラリーマンの年金制度
5人以上の従業員がいる会社(個人事業も含む)は強制的に厚生年金に加入が義務づけられています。
注 旅客、飲食、接客、娯楽、理容・美容等のサービス業は加入が任意です。
会社員(派遣、パート等を含む)は、週の労働時間が30時間以上なら本人の意思にかかわらず厚生年金の被保険者となります。
注
国籍は問いません。
年齢要件もないので、20歳以下から75歳までのサラリーマンが被保険者となります。
被保険者になると「厚生年金保険料」が給料から強制的に天引きされます。
これは「強制」ですから未納者はいません。
厚生年金保険料は半分は会社持ちなので、サラリーマン本人は半額負担だけですからお得です。
おまけに扶養している配偶者(3号被保険者)がいると、その保険料も半額負担の中に含まれていることになっています(実質は負担なし)から更にお得なのです。
おまけのおまけとして、厚生年金に入っていた人は基礎年金と厚生年金がダブルでもらえますが、基礎年金は国からの補助(国庫負担)が50%もあるので更に更にお得になります。
国庫からの補助は基礎年金の他に事務費の全額が支払われているため、利回りの大半を手数料(事務費など)として取られてしまう民間の個人年金保険に比較しとてもお得なのです。
おまけのおまけのおまけとして、3歳未満の子の養育のため被保険者が育児休業を取得した期間は、保険料が免除され、しかもこの期間は保険料を納付したものとして年金額に反映してくれます。(手続きは事業主がしてくれます。なぜなら事業主負担分の保険料も免除されるからです。)
また一般に女性は男性に比較し平均余命が約6年長く、個人年金保険ではその分だけ女性の保険料は高くなりますが、国民年金や厚生年金などでは男女で保険料の差が無く、女性に有利な制度となっています。
そうして10年間保険料を納めると65歳から年金をもらうことができます。
(もらえる年金額は、働いていたときの標準報酬額と、働いていた期間に比例して増えます。)
独身なら平均すると月額16万円、夫婦なら23万円ぐらいもらえます。
厚生年金保険なので当然「保険」が付いています。
仕事中かどうかに関係なく病気や怪我で「障害者に認定」されると、程度(1~3級、準3級)に応じて年金(障害基礎年金、障害厚生年金)または一時金(障害手当金)がもらえます。
障害の原因となる事故や病気で最初に診察を受けたときに被保険者資格があればこの年金がもらえるので、入社1年目でもOKです。
注 入社前に国民年金の未納期間があるともらえない場合があります。
「被保険者が死亡」した場合にも、遺族に年金が給付(遺族厚生年金)されます。
この場合も被保険者期間が短いと加入期間300月(25年)と見なされて最低保障の年金が給付されます。
補足として、離婚した場合、扶養されていた妻には結婚後の夫の被保険者期間に応じた厚生年金をもらう権利の半分までがもらえることとされています。
最後に、国民年金と厚生年金の関係は次のようになっています。
厚生年金は被保険者期間とその間にもらった報酬額に比例した年金と基礎年金が65歳から支給されます。
でもサラリーマンは厚生年金保険料しか払わないのになぜ報酬比例の年金の他に本人と配偶者2人分の「基礎年金」がもらえるのでしょう。
厚生年金保険料は日本年金機構を通して国(厚生労働省)が管理する厚生年金特別会計というお財布に貯金されます。
もともとそのお財布から厚生年金は支給されていたのですが、昭和61年に基礎年金制度ができたので、厚生年金特別会計の財布から直接支払う厚生年金と別管理されている国民年金特別会計のお財布を通じた基礎年金という2つのルートに分けられました。
したがって厚生年金特別会計から国民年金特別会計へは「拠出金」としてお金が流れ、個人へは「基礎年金」という名目で給付されることになっています。
でももらえる額が同じならもともとの厚生年金一本に統一してもらいたいと思うのは私だけでしょうか。
この複雑さは国民全員に「基礎年金」があると思わせるための”しかけ”であって必ずしも国民全員が幸せになれる”しくみ”ではないような気がします。
参考
ここでチョット年金のお話です!
こんなに手厚い社会保険(その1)
「日本人はもっと人生をエンジョイするべくお金を使うべき」
投資や家計全般のご相談についてはこちらをご覧ください。
賢い投資家のお得な自分年金の作り方(その1)
賢い投資家のお得な自分年金の作り方(その2)
賢い投資家のお得な自分年金の作り方(その3)
賢い投資家のお得な自分年金の作り方(その4)
賢い投資家のお得な自分年金の作り方(その5)
賢い投資家のお得な自分年金の作り方(その6)
賢い投資家のお得な自分年金の作り方(その7)
賢い投資家のお得な自分年金の作り方(その8)