2019年9月16日月曜日

厚労省「公的年金の財政検証」を検証してみました(その2)


財政検証について検証してみました。

まず公的年金の現在の状況は、

1 公的年金の被保険者数(社会保険料を支払っている人たち)
 1号(国民年金)被保険者数    1,460万人
 2号(厚生年金)被保険者数      4,430万人
 3号(サラリーマンの妻)被保険者数 840万人
                                       合計 6,730万人

2 基礎年金受給者数(公的年金を貰っている人たち)
  国民年金+厚生年金       合計  3,590万人

3 標準報酬等及び年金の平均額
  ①現役男子の平均的な標準報酬額     43.9万円
  ②現役男子の手取り収入(可処分所得)    35.7万円
  ③厚生年金の標準的な年金受給世帯の年金額 22.0万円
    内訳    報酬比例年金額      9万円
            基礎年金 (夫婦2人分) 13万円(満額)
  ④所得代替率
  ③÷②×100%=22万円÷35.7万円×100%=61.7%

参考
なぜ現役男子だけなのかとお怒りの方もおられるかも知れませんが、社会保険や税制のしくみの大前提は、働く夫(男)と専業主婦(女)の世帯なのです。だからと言って女性に不利益があるのではなく、3号被保険者の保険料が0円(年金は1千万円以上が給付される)になっていますから、保護されている面が多いのです。方や独身世帯については扶養控除がなかったりしますから、不利です。


さて、公的年金制度を長期的に安定させるためには、
収入(保険料)=支出(年金給付)
とする必要があります。

グラフ参照 (川島FP作成)
参考
このグラフは標準生命表2018から作成しています。
10万人が生まれてから、年齢が上がるに従って人口が減少し、やがて0人となります。
18歳から65歳までを現役世代、65歳以降を年金世代とすると、現役世代が社会保険料を支払い(収入)、そのお金を年金世代が年金として受け取っている(支出)のが現在の公的年金のしくみです。このデータでは現役世代と年金世代の人口比は2.5対1となっています。しかし現状として18歳~22歳は就業人口が少なく、また各年代で未就業者がいますから、この比は実質1.9対1となっています。


また前記の式は、
(収入)被保険者数×保険料単価=年金受給者数×年金額(支出)
となります。

参考
この収支の大雑把なイメージとして、
保険料等40兆円+12兆円(税金+GPIF)=年金47兆円+積立5兆円

この式に現状の数値を代入すると、
保険料等40兆円=6,730万人×60万円(年額)
年金給付47兆円=3,590万人×131万円(年額)
131万円の年金の平均月額は約11万円(夫婦2人で22万円)となります。

注意
全体を平均化してしまうとこのような結果となりますが、年金受給者については、未納期間、免除期間などがあり、個々人の受給額には増減があります。

そこで将来を予測する上で重要となる点は、被保険者数と受給者数がどのように増減するのかです。

少子高齢化が言われていますが、出生数と死亡数が今後どのように変化するのか、予測が難しいため、財政検証では数限りない前提と組み合わせを網羅しており、アホなマスコミを尻込みさせるには十分な内容となっています。

でもはっきり言って、スプレッドシートをいくら作ったところで、予測は当たらないので、無理に熟読する必要はないのです。

以下にエッセンスだけご紹介します。

注意
示されたデータについて「これって本当」とか、「絶対正しいの?」とか疑問を持ってはいけません。「ふ~んなるほどね」程度でご理解ください。

まず被保険者数と受給者数がどのように増減するのかの見通しです。

                     川島FP作成

横軸は西暦、縦軸(左)は人数、縦軸(右)は被保険者数と受給者数の比です。

この図より2019年、被保険者数は6,730万人、受給者数は3,590万人からスタートします。

現状として、保険料を支払う被保険者数は年金を貰っている人の1.9倍(右目盛り)居られます。

つまり1.9人が60万円づつ社会保険料を天引きされ、それに税金から15.5万円、GPIFから1.5万円を上乗せし、その年に1人の受給者に131万円を年金として給付していることになります。

注意
社会保険料60万円の中には会社負担分も含まれていますから、サラリーマンの負担はより軽くなっています。

そして将来は、いずれの人口も減少しますが、現役世代の被保険者数が激減し、年金受給者の1.2倍程度になってしまいそうです。

注意
この倍率は、2049年頃から1.2倍で一定となりますが、このあたりが予測の限界で、つまりその先は「よく分かりません。」と読み取るのが正しい見方なのです。

でも将来、現役世代が減り始めたら、待機児童問題は解消されるはずですから、大学までの学費無償化も実現すれば、もしかしたら「産めよ増やせよ!」の世の中となるかも知れませんね。

さて次に、今の若い人たちが将来いくらぐらいの年金が貰えるのか?

                     川島FP作成

このグラフは、それぞれの年代の方が65歳からいくらぐらいの厚生年金(夫婦2人の月額)が貰えそうかを示しています。

例えば、今年30歳の人は65歳から夫婦2人で月額22万円を一生涯貰えるかも知れません。

夫婦共に90歳まで生きるとすると、
22万円×12月×25年=6,600万円

こんなに貰えます。(訂正、貰えるかも知れません。)

注意
繰り返しますが「これ絶対正しいの?」とか聞かないようにお願いします。

現在50歳以上の方は、年々年金額が目減りしそうです。

参考
グラフでは、30歳の人たちは50歳以上の人たちより年金額が多く、それも長期で貰えるので、年金制度は将来改善するかのように見えますが、50歳以上の人たちの標準報酬は、昭和~平成の頃に貰った給与の平均(保険料は少額)なので、所得代替率で見ると、若い人たちよりもお得な世代なのです。


以上財政検証について検証してみました。

この投稿が若い世代の方の年金財政に関するご理解促進にお役に立てるならば幸いです。

その1



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