2013年8月21日水曜日

為替と日米金利差及び国際収支についての分析

今年5月初めより米国債(U.S. Treasuries)の利回りが上昇(スティープ化)しています。
8月20日現在、10年債の利回りは2.88%であり、3%の大台回復が目前の状況となっています。

一方日本国債(JGB)の利回りは10年債が8月20日現在0.76%であり、5月末の0.9%から低下(フラット化)しています。(グラフ参照)

(グラフはクリックすると拡大します。)

国債の利回りが低下するとはつまり債券価格が高騰しているためであり、日本国債については英エコノミスト誌の表現によれば「債券バブル」の状況と言えます。


米国債の利回りが上昇(価格は下落)した原因はQE3(Quantitative Easing program 3、FRBによる量的金融緩和政策(住宅ローン担保証券(MBS)の大量買い付け)第3弾)の縮小が見込まれているため、米国債が高値(低利回り)のときに売ってしまおうとする動きによるものです。

そしてその売却代金はニューヨーク株式市場に向かっています。

一方日本国債は黒田バズーカにより市場から大量に買い上げられたため、一時は受給が逼迫し利回りが0.3%台まで低下(価格が急騰)しました。

米国債の利回り上昇と日本国債の利回り低下はデカップリング(逆相関関係)と呼ばれ、通常は米国債が買われれば日本国債も買われる正の相関関係なのですが、現在は日米政策当局の考え方を反映した異常状態となっており、「当面は現状維持(デカップリング傾向)」と大方のエコノミストは見ています。

さて「為替」については、教科書的には日米金利差のデカップリングを相殺するため円安に動くはずです。

その理由は、高金利通貨は先物市場においてディスカウント(割安価格)となりますから、米ドルを買いたい人が増えドル高円安になります。

つまり、0.7%程度のまったく儲からない日本国債よりも3%の米国債がとても魅力的に見えるのです。

とは言うもののこのまま米国の金利が上昇していくとの見方は少数派で2.8~3.0%の間で足踏みし、円安も一服のようです。(9月のFRBまで様子見)

参考
金利差と為替の相関をグラフに示しています。
2007,2008,2010,2011年は相関が0.8以上で、日米の金利差と為替はしっかりとリンクしていますが、2009年はQE1の影響(+日銀の無策)によりデカップリング状態です。
2012,2013はQE3(+黒田バズーカ)による影響でデカップリング状態となっています。

(グラフはクリックすると拡大します。)


為替については金利差と共に「国際収支」が大きく影響します。

例えば、円安により日本からの輸出が盛んになると輸出会社には「米ドル」が大量に入金されます。
輸出会社としては社員や関連する会社に「円」で支払わないといけないので、この「米ドル」を売って「円」を買わなくてはなりません。

つまりシーソーのように行き過ぎた円安はドル売り/円買いを招き、結果として為替のシーソーはバランスするのです。

参考
でもアップルやアマゾンがやり玉にあがっていますが、現在の国際企業では国外の利益を国内に持ってくることはなく、タックスヘブンなどを活用し法人税をまったく払わない、つまりは為替のシーソーを動かさないようなマネーの流れができつつあります。

ここで日本の「国際収支」を見てみましょう。

マスコミは経済をよく知らないので物の輸出入に関する「貿易統計」しか報道しませんが、国としての収支(円と外貨の需給)を知るには「国際収支」で見ないと分かりません。

家庭で考えると、給料やボーナスと月々の買い物代金だけを見ているのが「貿易統計」ですが、保険料の支払いや、家や車の購入、住宅ローン、株式投資、投資信託からの配当金などについてもしっかり把握していないと家計は正しく管理できません。

国についても同様なのです。

「国際収支」は物やサービスの輸出入に関わる貿易サービス収支の他に、米国株の配当金やハワイの不動産などからの家賃収入などの所得収支があり、この2つを合わせて経常収支となっています。
「経常収支」=「貿易サービス収支」+「所得収支」

また「国際収支」=「経常収支」+「資本収支」+「外貨準備増減」となっており、「資本収支」とはソフトバンクが米スプリントを買収するときに外国人株主に支払った約216億米ドルが当てはまります。

グラフには「国際収支」を構成する「経常収支」と「資本収支」及び「経常収支」の内訳となる
「貿易サービス収支」と「所得収支」を示しています。



(グラフはクリックすると拡大します。)

マスコミが騒いでいるように2012年の「貿易サービス収支」は8.3兆円の大赤字です。

でも実際は所得収支(外貨投資からの配当金など)が14.3兆円もあり、経常収支としては4.8兆円の黒字なのです。(14.3-8.3=6兆円 誤差の1.2兆円は経常移転収支分)

つまり日本は差し引きすると円の支払いよりもドルの収入が多く、結果としてドル売り圧力の方がまだまだ強い状況となっています。(円高要因)

そうは言うものの経常収支の黒字幅は2007年の25兆円をピークに下がり始めており、直近7月の貿易統計では円安及び原油・LNGの輸入増により単月で1兆円の大赤字となっていますから、遅かれ早かれ「経常収支」の赤字転落も目前と言えます。

以上から、教科書的な分析をすれば、為替については高金利の米ドルをみんなが欲しがり、また経常収支も赤字になると国全体でドルを買わないといけなくなるので長期的には「円安」になるのは当然と考えられます。

そしてその時こそ世界中の投機筋が「日本国債売り」を仕掛けてくるのです。