2010年8月27日金曜日

TOPIXと為替の関係



2005年ころ、東京証券取引所において外人買いが話題になったことがありました。
外国人投資家により東証株価が大きく高下し、リスクを取りたがらない国内投資家もつられて、市場参加者が大いに増えた時期でした。

現在では、外国人投資家は日本国内にめぼしい投資対象がないためか、円という「現金」を買っているようです。

上のグラフは1991年から現在までのTOPIX、ドル/円レート及び東証の売買高の推移を示しています。
注:
TOPIX及びドル/円レートは左目盛り
(ドル/円レートは10倍しています。1000の目盛りが100円の線になります。)
売買高は1日当たりの平均(単位 兆円)で右目盛り

注目は、2005年から2008年(9月のリーマンショック)までの間、売買高が2兆円を越え、2007年ではほとんどの期間で3兆円を越えていたことです。
このときの主役が外国人投資家だったのです。

2005年を振り返ると、国内企業はやっと不良債権を処理し、小泉構造改革も緒に就き、中国の台頭などによる輸出も好調でした。

日本もやっと世界の好景気の波に乗り、明るい話題が増えました。
資源価格の高騰、鋼材価格は20%もUP、上場企業は過去最高益、トヨタの経常利益1兆円越え、東京の路線価も13年ぶりに上昇、来春の大卒採用が23%増
などなど・・・

ちなみに、2005年9月の衆議院選挙では自民党が圧勝し(いわゆる小泉チルドレンの誕生)日本経済に対して外国人投資家の楽観論が広まりました。

このときになぜ日本が世界の好景気の波に乗れたのか?
たぶん複合的な好条件が重なっての結果だと思いますが、敢えて私は「為替」の影響をあげたいと思います。

2005年から2008年の間、売買高が約3倍近くまで急上昇しています。
これは外人買いが主因といわれています。
このときの為替は、2004年12月の102.7円から2005年11月の119.77円まで円安になっています。

この期間の平均レートは114円です。
円安に対応するようにこの期間の売買高は、2004年12月1.2兆円から2005年11月に3.0兆円に急拡大しています。

TOPIXに対する為替の影響を定量的に検証してみます。
【売買高-ドル/円レート】の相関を期間別に計算すると、
1991-2004 [相関係数 -0.1]
2005-2010 [相関係数 +0.76]

【TOPIX-ドル/円レート】の相関を期間別に計算すると、
1991-2004 [相関係数 -0.12] 
2005-2010 [相関係数 +0.94]

2005年以降、明らかに為替レートがTOPIXに影響していることが分かります。
為替レートが114円であれば国内企業の国際競争力は抜きん出ており、また株式や土地の価格も外人投資家に魅力的だと思ってもらえるレベルではないかと思います。

しかし現在の為替レートはあまりにも国力と乖離しており、日本の国益にとってこれほど大きな損失をもたらすものはありません。

世界の市場は、もはや一体化しており、その相関が深まりつつあります。
東証市場も2005年以来国際化が進展し、国内外の多くの投資家を集めましたが、現下の異常な円高により、東証だけが世界の市場から孤立してしまいました。
投資において日本は、世界経済のガラパゴス(リスクヘブン?)になってしまったのです。

欧米やアジア経済は早晩回復するでしょう。
そのときにまたしても日本経済だけが置き去りにされないよう、しっかりと世界経済とリンクしなくてはなりません。

そのキーワードが「為替」なのです。
為替が100円を超えたときが日本経済の夜明けになるでしょう。

参考
為替に影響される業種を調べてみました



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