2012年7月30日月曜日
個人年金保険契約者に迫り来る市場価格調整率の恐怖
(グラフはクリックすると拡大します。)
今個人年金保険が売れています。
一方、好調な販売にブレーキをかける保険会社も増えています。
売れている原因は、銀行預金などの金利があまりにも低いため、多くの人たちが少しでも利回りのよい安心できる金融商品を見つけようと探し回り、たどり着いたのが「個人年金保険」と言うわけです。
もう一つの原因が、「国の年金制度」への不信感から、若い世代に将来への備えとして「個人年金保険」が選ばれています。
一方、販売側の保険会社では日本国債の利回り低下から、契約者に保障する予定利率での運用が困難となり、このままでは「逆ざや」となるため保険料の値上げが計画されたり、販売を停止したり、制限したりする事態となっています。
ではこれまでに「個人年金保険」を契約された方はお宝保険を手に入れることができラッキーだったのかと言うと、そうした方への私のアドバイスは「止めるなら今です!」と言っています。
私の判断は、現在の個人年金保険や変額年金保険ははっきり言って「時限爆弾」そのものです。
その理由は市場価格調整率にあります。
保険会社では個人年金保険などの責任準備金は主として日本国債で運用されています。
長期金利の指標となる10年国債の金利は現在0.75%前後まで下がっています。
(金利が低下すると国債の価格は上昇しますから、現状では国債価格が高止まり状態(国債バブル状態)となっています。)
したがって個人年金保険契約者は、間接的に過去最高値の日本国債を買っていることになります。
国債価格(利回り)は世界経済や日本経済の状況に応じて変化します。
個人年金保険を中途解約した場合、解約日の利率と残存期間により市場価格調整率が計算され、解約返戻金から差し引かれることになります。
ヨーロッパでは南欧諸国の国債の利回りが7%を超え、危機的な状況となっています。
このような状況は2年前には考えられないことでした。
でも世界中の投資家心理が「不安」に襲われると、格付けがAAAの国債といえども投げ売りされ価格は暴落し、あっという間に金利が2~5%も上がってしまうのです。
この国債の暴落リスクは保険会社ではなく契約者が負担することになっており、その仕組みが市場価格調整率なのです。
具体的に計算してみましょう。
契約年 平成20年
被保険者 35歳男性
年金開始年齢 65歳(30年間の積立)
月額保険料 2万円
予定利率 1.5%
計算式は次のとおりです。
市場価格調整率=1-〔(1+予定利率)/(1+解約日の利率+0.3%)〕^残存年数
(残存年数は累乗されます。)
この契約を10年後に解約するとして、
累計保険料 2万円×12月×10年=240万円
解約日の契約者価額 251万円(実質利回り1%)
解約日の利率 4%
解約控除率 3%
残存年数 20年
この前提より市場価格調整率を計算すると、
市場価格調整率=0.42(42%)(グラフ参照)
解約返戻金=契約者価額×(1-市場価格調整率-解約控除率)
解約返戻金=251万円×(1-0.42-0.03)=138万円
返戻率=138万円÷240万円=55%
金利が4%になっていると解約返戻金は支払った保険料の55%しか戻らないことになります。
金利が7%なら返戻率は30%まで急減します。
リーマンショックでさえニューヨーク・ダウは50%までしか下がっていませんから、個人年金保険のリスクはかなり高く、定期預金程度のリスクと考えている方は「知らなかった」ではすまない状況にあることを理解しておく必要があります。
しかし金利が上がるかどうかはエコノミストによりいろいろな見方があります。
(でも財務省の人の中には国債暴落に備えて自分のお金は国債ではなく「金」を買っている人が居るそうです。)
私は欧州の財政・金融問題の後に来るのは「日本国債の信用不安」と考えていますので、かなりの確率で日本国債は暴落(金利急騰)することを前提に、国債価格が高止まりしているときに「時限爆弾」は処理することをお勧めしています。
個人年金保険の早期解約には解約控除率が5~7%も取られますから厳しい選択となりますが、金利がいつまでもこのままということは考えられません。
そうは言いつつ金利がいつ上がるのかは私にも分かりません。
せめてものアドバイスはこのサイトを見て金利センスを磨いてください。
注意
市場価格調整率が適用されるかどうかは契約書または約款などをご確認ください。
参考
民主党政権が崩壊し自由民主党が政権に復帰した場合、遠からず長期金利が上昇し始めると私は考えています。すでに日本国債のCDSは上昇しつつあります。
従って住宅ローンを変動金利で借りている方、長期固定の個人年金保険を契約している方は早めの対策が必要です。
投資は自己責任でお願いします。
参考
The Wall Street Journal記事「債券相場、計算上は大惨事に見舞われる危険性あり」
金利と市場価格調整率の関係はこちらをご覧ください。
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