2011年1月16日日曜日

損切りの哲学と理論(その2)

損切りについてFPや投資のプロはどのように考えているのか。

アドバイスの基本は次のとおりです。
○損切りやナンピン買いはしない方がよい
○その理由として、値下がりした原因など相場環境の変化を知ることがより重要
○投資対象の成長性に変化がない限り保有しつづけることが最善
○損切りは被害局限が図れるものの、反発時の利益損失の可能性もある
○ナンピンは当面のリスクを拡大させ、ポートフォリオを痛め、長期保有に悪影響がある
○短期売買ではコストが嵩み運用のパフォーマンスを低下させる

株式投資をした場合、投資時点では分からなかった情報、たとえば、不良資産を隠していた、利益を水増ししていた、犯罪捜査の対象となったなどの悪情報があれば、売却という選択は適切ですが、短期的な相場環境の変化で評価損が発生しても「想定内」として気にしないのがよいのです。

ではどのくらいまでを「想定内」と考えるべきか。

リーマンショックではニューヨークDowは1万4千ドルから50%以上も下落しましたが、この5年間で見れば年平均7.22%で値上がりしています。

一方相場環境の変化として「国家間の戦争」ほど大きなものはないと考えられます。
戦争が起こったら株式投資は止めるべきか。

ジェレミー・シーゲルは「株式投資」の中で、「第二次世界大戦の6年間、株価は戦争が始まる前の水準から上下32%以内の範囲でしか動いていない。」と書いています。

また、「第一次世界大戦勃発の報を受けて狼狽売りに走った投資家は、相場の上げ幅が過去最高となるすばらしい年を逃してしまった。」とも書いています。

株式については、価値を産み出し続けるシステムであり、長期では平均7%の利回り(複利)となることがジェレミー・シーゲルにより証明されているので、会社の経営に問題がなければ、いかなる状況も「想定内」と考え、価格変動は気にしないことが最良の判断と言えます。

補足として、長期投資においては、アセットアロケーションがより重要となります。

投資対象として、株式、債券、不動産などがありますが、5年から10年程度を見通した結果、どのセグメントが値上がりしそうなのか適切に判断することが大きな儲けにつながります。

株式などで個別の銘柄選びに心血を注いでも、報われる可能性は高くありません。
値下がりを理由として、A株を売りB株を買ったとしても、全般の相場環境が悪ければ全体の地盤沈下は避けられません。

銘柄選びが徒労となるだけでなく、買値にこだわることもあまりお勧めできません。

多くの「プロスペクト投資家」にとっては買値からの「値上がり」こそが投資の目的だと思いますが、幼稚園児が1週間で大人にならないように、投資も「成長」に期待するのが本筋と言えます。

以上からまとめのアドバイスとして、投資では目先の価格変動に左右されることなく、長期的かつマクロ的な視点を確固として堅持し、損切りなど歯牙にも掛けない態度でいることが大きな果実を得る唯一の方法なのです。

さて株式以外ではFX(外国為替証拠金取引)などは「損切り」をどう考えたらよいでしょう。

FXは為替レートという変動値に投資し、投資タイミングにより儲けようとするものなので、長期に保有しても価値を産み出すことはなく(株式のように成長性がない)、上記のアドバイスは必ずしも適切ではありません。

金などの商品投資においても、長期的に価値を産み出さないことにおいては同じことになります。

ではFXにおいても、損切りはすべきでないのか?

続く

損切りの哲学と理論(その1

損切りの哲学と理論(その2

損切りの哲学と理論(その3

損切りの哲学と理論(その4

損切りの哲学と理論(その5



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