2011年1月17日月曜日

損切りの哲学と理論(その1)

損切りをすべきかどうかは投資家にとって永遠のテーマです。

マネー雑誌などでは、投資において「損切りは必勝のカギ」と言われています。
投資する時に予め損切り価格を決め、目論見が外れたら冷静沈着に実行する人ほど勝てるのだそうです。

なるほど、投資額から一定額下がったら自動的に「損切り」し、資産の被害局限を図るとともに、手にしたキャッシュで底値買いができれば儲かるというわけです。

一般に投資物件の値下がりに対して、3つの行動パターンが考えられます。
・損切りする
・何もしない
・難平(ナンピン、追加購入)

どちらかと言えば、何もしない人の方が多いのではないでしょうか。
いわゆる「塩漬け状態」で持ち続けている投資家です。

プロスペクト理論では、「買値に戻ったら売りたい」という心理(元本回復期待)がはたらくために、損切りができない人が多いと言われています。

投資は皆お金持ちになりたいと夢をいだき、必ず値上がると信じて銘柄を選んで投資するのですから、値下がりなんて想定外であり、「まさか」と言う心理がはたらくのは当然かもしれません。

そのような「悪夢」は一日も早く消えてくれることを願い、「プロスペクト投資家」は辛い日々を耐えなければなりません。

さて損切りに関連して、古の賢人本間宗久翁は次のように教訓を残しています。

相場三昧伝 第47章 欲を離れる
米の高下につれて、立場もなく、上ぐべし下ぐべしと商い致し、五六日も過ぎ、米の動きにつれ、弱気になり、その節売り過ぎ致し、十四~五日も過ぎ、又々買い気になり、その度毎に損出るなり。
是は商いを急ぎ、是非とも取る心にて致す故違うなり。
欲を離れ、天底を見定め、上げならば上げ、下げならば下げと、立場を極め、三位の伝に引き合わせ、売りなり、買いなりと立て抜くべし。

意訳
相場の局面に対して、確固たる考えや立場がないと、欲に駆られ、相場の変化に釣られて弱気になって売り過ぎたり、しばらくして買い戻したりし、その度ごとに損を出すことになる。
これは、欲に駆られて相場を見、儲けようと売買を焦るから失敗することになる。
欲を捨て、冷静客観的に天底を見極めて、局面が上がり相場なのか、下がり相場なのか、大きな流れを大局的観点から判断し、売買しなければならない。

コメント
投資手法には、「フロー」と「ディレクショナル」の2つがあります。
フローはいわゆるデイトレードなどの短期売買で用いられ、上げ相場、下げ相場の流れに乗って、利ざやを稼ぐ手法です。
しかしフローは多くの人が失敗しており、ごく少数の天才(個人投資家のBNF氏など)だけが成功しています。
ディレクショナルはマクロ分析により、長期的な観点から投資する手法であり、宗久翁の手法も天井値段、底値段を見極めじっと待つ戦略ですから、ディレクショナルに分類できると考えます。

宗久翁の教えについて私の解釈としては、翁は極めて頑固なので損切りはしないと思います。

続く
損切りの哲学と理論(その1

損切りの哲学と理論(その2

損切りの哲学と理論(その3

損切りの哲学と理論(その4

損切りの哲学と理論(その5


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