3 マクロ視点による貯蓄と運用の方針(その1)
投資に興味のある30台サラリーマンの方は書店などで儲かり情報満載の雑誌などをよく購入されているのではないでしょうか。
さてそれらの情報により儲かりましたか?
証券会社のアナリスト(またはチャーティスト)など、人気の人たちによる紙上予測も区々で、素人の予想とドングリの背比べと言ってもいい内容が多いのではないでしょうか。
普通に考えれば、私がアナリストなら本当に儲かる情報なら絶対に人に話さず、まして雑誌に記事を載せることなど絶対せず、こっそりと自分だけ儲けます。
アナリストたちは、たぶん自分も信じていない「儲け話」を記事にしているとしか考えられません。
しかし彼らの仕事は「儲け話」を必要とする人たちに「話題」を提供し収入を得ることなので、その「話題」が雑誌の売り上げを伸ばせるものであればよく、ほんとうかどうかまでは責任はないと考えているようです。
さて「儲け話」につい釣られてしまう方に、「投資の不滅の真理」をお教えしますからよく熟読してください。
バートン・マルキール「ウォール街のランダム・ウォーカー」(株式投資の不滅の真理)から以下の文章を引用させていただきます。
「ランダム・ウォークと言うのは、「物事の過去の動きからは、将来の動きや方向性を予測することは不可能である」ということを意味する言葉である。これを株式市場に当てはめると、株価が短期的にどの方向に変化するかを予測することは、難しいということだ。言い換えれば、専門の投資顧問サービスや証券アナリストの収益予測、複雑なチャートのパターン分析などを用いても、無駄だということである。」
バートン・マルキールは経済学者ですから、以上の言葉は思いつきではなく、過去のさまざまな投資手法を分析し得られた結果を論文として発表したものです。
この分析結果は、世界中の市場において適用でき、信頼できる論文として、多くの機関投資家の投資姿勢に影響を与えています。
(もっともウォール街やロンドンのシティーでは評判が悪いようですが。)
現在では、この成果に基づき年金資金などの機関投資家も投資顧問のアドバイスによるアクティブ運用から、市場全体に投資するインデックス運用などのパッシブ運用になって来ています。
この「投資の不滅の真理」に従って、つぎのことをしっかりと理解する必要があります。
○短期では、誰であろうと予測が当たり続けることができないため、儲からない。
ということです。
ですから、貯蓄と運用は「長期」の視点で行うのが基本ということになります。
長期的な観点がなぜ良いかは次の理由です。
○経済は短期的には変動しますが、長期では安定し確実に成長して行くこと
○インフレ、デフレ、円高、BRIC'Sブームなどの当面の状況は一時的なものであること
○比較的長期であれば、現状の矛盾が解消される方向での予測は当たりやすい
でも長期的な視点にはマクロ的視点が不可欠です。
マクロ的視点とは、国や世界全体の経済について広く見ることで、GDP(国内総生産)成長率や物価指数、国際収支などをもとに、今後の経済の見通しについて考えることです。
経済学者ではないので難しいと思うかも知れませんが、日頃のニュースや身近な物価、金利、収入、会社の経営状況などを見比べ、「いまの経済状況は何か変だな」と感じ取ることが大切です。
そして「バスに乗り遅れるな」的なセンセーショナルな雑誌記事も、冷静に見る態度も必要です。
注意
経済用語は理解する必要がありますから、日経などで勉強してください。
今私が「変だな」と思っていることは、次の2点です。
○円が高いのは理解できない
そう言う理由は
・日本経済はガタガタで、まったく復活する道筋が見えない
・日本はギリシャやアメリカよりも借金が多い
・金利は0である
○日本国債をまだ買い続ける金融機関があることが理解できない
そう言う理由は
・現在の赤字国債の規模では返済困難なのは明白
・いつ日本が破産するのか、世界は固唾をのんで見守っている
・三井住友銀行は投資戦略を変え、ほほすべての日本国債は1~2年の短期ものに切り替えた
(長期国債は現在最高値(最低金利)なので、この売却で三井住友銀行は過去最高益を稼ぎ出しています。)
・逆に財務省は、長期ものを増やし始めている(将来の金利上昇のショックを緩和するため)
為替についての補足
最近のFX取引では、自動売買ソフトが流行となっています。
中には高額なソフトを口コミを通じて販売している悪質な業者もいるようです。
でも、「絶対儲かる」なら人に売らずに自分で何十億円でも儲ければよいと思いませんか。
いずれにしろ、「タイミング売買では儲からない」と言うのがプロの経験則です。
実績を挙げたトレーダーが異口同音に言うのは「ディレクショナル戦略(長期的な相場の方向性を見極め投資する方法)」が唯一の勝つ方法だとのこと。
したがって、膨大な過去のデータを分析し、心理学などを駆使したところで「未来は予測できない」と言う「投資の不滅の真理」に従うしかないのです。
決して出所の怪しい高額なソフトで一儲けなどと考えないことです。
投資の素人ほど騙しやすいものはいないというのも、この世界では常識となっています。
聞きかじりのあやしい知識と手に持てあますほどの「強欲」に眼がくらんでいるからです。
熱をさましたければ「本間宗久翁の相場三昧伝」をお読みください。
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