2010年6月28日月曜日

個人年金保険の保険料と年金にかかる税金(その2)

個人年金保険からお金を引き出すときには、その方法により課税が異なります。引き出し方法別に解説します。

参考
相続税: 亡くなられた人(被相続人)が契約した保険から保険金をもらったときに課税されます。
一時所得: 自分で契約した保険から満期保険金や解約返戻金などをもらったとき課税されます。
贈与税: 他の人(受取人)に自己の保険契約からお金が支払われたら贈与税が課税されます。


○満期前に被保険者が死亡したとき
個人年金保険の死亡保険金は、一般的にその時点の解約返戻金(累積保険料)程度ですから少額です。

契約者(夫)と被保険者が同じで、妻が死亡保険金を受け取る場合は、相続税が課税されます。
死亡保険金を法定相続人(妻、子2人)が受け取る場合は、500万円×3人=1,500万円までは保険金への課税はありません。(相続財産に加算する必要がない。)

もっとも、妻、子2人なら1憶6千万円までは相続税は0円ですから、一般の人なら相続税は取られません。

契約者(夫)と被保険者(妻)の場合の死亡保険金は、夫が受け取るので一時所得になります。
計算式は、
死亡保険金-保険料累計額-50万円=一時所得

個人年金保険の場合、死亡保険金と保険料累計額はほぼ同額なので、所得税が取られる心配はありません。

○中途解約
解約返戻金は一時所得となり所得税が課されますが、解約返戻金と保険料累計額がほぼ同額か下回りますから、所得税が取られる心配はありません。
計算式は、
解約返戻金-保険料累計額-50万円=一時所得

○契約どおり年金としてもらうとき
年金は、公的、私的を含めて雑所得となります。
公的年金は、公的年金等控除となりますが、私的年金の場合は、それまでに支払った保険料が必要経費として控除できます。

参考
公的年金等控除額
65歳未満 年金額が130万円未満は70万円(70万円を越える額に課税されます。)
65歳以上 年金額が330万円未満は120万円(120万円を越える額に課税されます。)


公的及び私的年金の場合、全体の所得は、

(公的年金-公的年金等控除額)+(私的年金-必要経費)=雑所得

私的年金の場合の年金額と必要経費の計算式は、

基本年金額+増額年金額+配当分=私的年金
必要経費=(基本年金額+増額年金額)×保険料累計額/年金の総支給見込額


年金の総支給見込額は、確定年金、保障期間付年金、有期年金、終身年金でちがいます。

確定年金:年金額×支給期間(確定期間)

保障期間付年金:年金額×支給期間(平均余命または保障期間のいずれか長い年数)

有期年金:年金額×支給期間(支給期間または平均余命のいずれか短い年数)

終身年金:年金額×平均余命

注:(基本年金額+増額年金額)=年金額

平均余命はつぎのとおりです。括弧内は女性の余命です。
(税額計算のための数値で、実際の余命はもっと長くなります。)

年齢-余命(女性)
55歳-23年(27年)
60歳-19年(23年)
61歳-18年(22年)
62歳-17年(21年)
63歳-17年(20年)
64歳-16年(19年)
65歳-15年(18年)
70歳-12年(14年)

具体例
保険料累計額 950万円
基本年金額 40万円(10年間保障期間付終身年金)
増額年金額    5万円
受取人は女性、55歳から年金受取開始

以上から、
年金額=40万円+5万円
保障期間10年よりも、平均余命が長く27年なので、
年金の総支給見込額=45万円×27年=1,215万円
必要経費=45万円×950万円/1,215万円=35.55万円

雑所得は、
45万円-35.55万円=9.45万円

この他に給与収入等や公的年金がある場合は、
公的年金-公的年金等控除+9.45万円=雑所得
給与所得+配当所得+雑所得=総所得

この総所得に所得税と住民税が課税されます。


○満期において年金原資を一括で受け取るとき
確定年金で契約しているときは、一時所得となります。
契約はその時点で解除されます。

保障期間付終身年金は、保障期間分の年金を一括でもらうことができますが、保障期間経過後も生きている限り年金がもらえる(雑所得)ので、一括受取額も雑所得となります。
契約は生きている限り継続します。

一括払戻額は、
確定年金:残存年金支払期間中の未払年金の現価に相当する金額(Aとします)
有期年金:有期年金部分についての一時金額(Bとします)

(各社年金額にそれぞれ所定の係数を掛けて支払われます。概ね年金で受け取るときの85%~95%程度となります。)

確定年金の場合、一時所得の計算式は、
一括払戻金額(A)-保険料累計額-50万円=一時所得

保障期間付終身年金の場合、雑所得の計算式は、
一括払戻金額(B)×保険料累計額/年金の総支給見込額=必要経費

年金の総支給見込額は、
年金額×支給期間(平均余命または保障期間のいずれか長い年数)

年金額は、
基本年金額+増額年金額+配当分=年金額
一括払戻金額(B)-必要経費=雑所得

注意
一時所得は1/2の額に課税されますが、雑所得はそのまま総合課税されるので、税額が多くなり不利です。

以上ご参考としてください。


個人年金保険の保険料と年金にかかる税金(その1)

保険にかかわる税金については保険関係のブログにも投稿があります。


参考
個人年金保険契約者に迫り来る市場価格調整率の恐怖




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