株式投資において、勝率を上げるためには投資をしようとする会社について周辺情報を含めすべて調べ上げ、その結果将来性が多いに期待できると確信できたときに集中投資をすることだ・・・としたり顔で述べている自称専門家氏がいますが、バカ以外のなにものでもありません。
ロバート・ルービン 「確実なものは何もない。」
アラン・グリーンスパン 「確実なものはない。すべては確率の問題である。」
と言っています。
市場の動きは、確率的であり翌日の株価はランダムに変化している現実、そして「株式投資の不滅の真理」をこの方がまったく知らないとしたら・・・何をか言わんや
自称専門家氏がそのようにして100億円儲けたのならちょっとぐらい話を聞いてもよいかも知れませんが、たぶんこの方の収入のほとんどは、出任せ知識を投資家に話したり書いたりすることで得ていることは十分に推察できます。
ですから、賢い投資家はこのようないかがわしい「専門家氏」にはかかわらないことです。
それでは投資しようとする会社について調べなくてよいのでしょうか?
そのとおりです!
もし投資対象の会社を丹念に調べ、投資した結果として期待どおり儲かるのなら、それを仕事としているプロのファンドマネージャーがとっくに調べ尽くし、あなたが投資する前に安値で買っていることでしょう。
少なくともファンドマネージャーは会社の社長さんから経営の現状や見通しについて直接話を聞くことができるのですから、素人さんが必死でその会社の情報をかき集めたところで、得られる情報の量と質では勝負になりません。(それ以前の問題として経営分析に関する知識と経験においてプロとアマには雲泥の差があることも知る必要があります。)
ですから会社の分析では初めから勝てない勝負をしてもムダなだけです。
それよりも仕事として投資対象の会社の経営分析をしているファンドマネージャーが本当に勝率が高いのかどうかの方が重要です。
事実はファンドマネージャーの投資成績と素人投資家の成績に差は無いのです。
つまり会社の情報をいくら調べても、投資成績の向上には何の役にもたたないということです。
参考
〇田渕直也氏「投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について」より
「一般的な意味でのファンダメンタルズ分析の大半は、経済の現況を理解するためには欠かせないものであるが、相場の予測という点ではほぼ無意味である。」と書かれています。
〇「ファンダメンタルズ分析の罠」
経済指標や事実(ニュース)分析などに時間を掛けている間に、市場はどんどん先行して最新情報を織り込んで行くため、投資家が「買い」を入れた時には相場の波に乗り遅れてしまい、この投資家の成績は常に裏目裏目となってしまう。
〇バートン・マルキールは「株は事実ではなく、あくまで期待に基づいて形成される。」と書いています。
儲かる業種、儲かる会社を調べ尽くそうとしている極めて真面目な個人投資家の皆さんに理解して頂きたいのがこの事実なのです。
そこでなぜそうなるのかについて今回は考えて見ました。
さて今あなたはA社について徹底的に調べ上げ、株価が急騰すると確信したとします。
そこでA社の株を1000株購入しました。
ということはA社の株を1000株売った人がいるわけで、あなたの考えによると、賢いあなたに株を売った人は、A社の価値をまったく分かっていないど素人(アホ)ということになります。
でももしかしたら、A社の株を売ったのは機関投資家かも知れませんし、ヘッジファンドかも知れません。(つまり遅れてやってきた素人に高値で売りつけた・・・のかも?)
いずれにしろ、あなただけが真実を知っていて、その他の投資家は皆アホであるということは・・・たぶんないのでは。
つまるところ、売買が成立するということは、買いたい人が100人いれば売りたい人が100人いるということです。(もしかしたら一人で買い占める人がいるのかも知れませんが・・・)
買いたい人には買う理由が(確実に儲かるはずと・・・)、売りたい人には売る理由が(値が下がると思っている・・・)それぞれにあるはずです。
したがってその時の売買価格は総じて「中立」だと考えるのが適正な判断ではないでしょうか。
ですからこのとき市場においては賢い人もアホな人もいないのです。
株価が「中立」だとすると翌営業日に値が上がるのか下がるのかは50%&50%となります。
実際にこの確率分布を見てみましょう
グラフは、日経平均について2011年~2015年の5年間(長期)のデータと2015年の1年間(短期)のデータについて示しています。
横軸は、前日終値に対する値上がり率(%)、値下がり率(%)を-10%から+10%の範囲で示しています。(中心の0%付近は0.5%間隔に引き延ばしています。)
縦軸は、値上がり率に対する度数(発生確率)を示しています。
グラフより短期(1年間)でも長期(5年間)でも発生確率がもっとも高くなるのは前日終値よりも+0.5%値が上がる場合です。(株式は日々チョコットずつ上がりますから、長期保有ではこの効果が大きく効いてきます。)
ここを中心としてほぼ左右対称の釣り鐘型の分布 (正規分布)となっています。
このグラフより翌日に値が上がる、値が下がる確率はそれぞれ次のとおりです。
短期の場合
翌日に値が上がる確率は 57%
翌日に値が下がる確率は 43%
長期では
翌日に値が上がる確率は 54%
翌日に値が下がる確率は 46%
参考
短期、長期における日経平均のリスク(標準偏差σ)は、
短期のリスク 5.6%
長期のリスク 29.5%
標準偏差:(平均値±σ)の中に全データの約68%が含まれている。
以上より、市場では株価は翌営業日よりも0.5%ほど割安に売られているものの、その株が値上がりするのか値下がりするのかの確率はほぼ左右対称の正規分布なのです。(短期では値が上がるかどうかは丁半ばくちと同じなのです。)
したがって、株を売った人も買った人もどちらにも公平な結果がもたらされると言えるのではないでしょうか。
つまり市場で成立している価格は「中立」であり、その価格が上がるのか下がるのかはランダム(出たとこ勝負)なのです。
ランダムになる理由として、市場参加者が得ている様々な情報(過去の情報、来期の見通し、来月のイベントなどなど)がその日その日の価格にすべて反映されるため、まるでブラウン運動のように株価は不規則に変化しているのです。
参考
ブラウン運動
水の中に浮遊している細かな花粉の微粒子の動きを観察すると、ジグザグした不規則(ランダム)な運動をしています。アインシュタイン(相対性理論で有名な)がこの原因を発見し、熱運動している水の分子が不規則に花粉に衝突することで花粉が動かされていると分かったのです。株価も市場参加者それぞれの思惑がぶつかり合うことで上がったり下がったりするため不規則に動くことになります。
そのようにして株価は「値上がりもくろみ組」と「値下がり心配組」がバランス(中立)するような価格で取引されるのです。
ですから株価は常に適正であり、市場には賢い人もアホな人もいないのです。
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