今回のテーマは「欲」にします。
「欲」のない投資家は、たぶん居ないと思います。
「お金」と「欲」とは切っても切れない関係ではないでしょうか。
でも・・・
投資とは言え、この「道を極めた」人は、自分の「欲」をコントロールし、「欲」を超越したところに投資の意義を見いだしているようです。
第46章 無欲
我一分の了見にて、売り買い決して致すまじくなり。
三位の伝を表にし、立場を極め、売買の内、一方を立て抜くべし。
意訳
欲に駆られ、自分のチョットした判断で売り買いしてはならない。
熟慮の末に天井底を見極め、長い期間待って投資をしているのだから、その立場をしっかりと堅め、当初の考えのとおり売買しなければならない。
第47章 欲を離れる
米の高下につれて、立場もなく、上ぐべし下ぐべしと商い致し、五六日も過ぎ、米の動きにつれ、弱気になり、その節売り過ぎ致し、十四~五日も過ぎ、又々買い気になり、その度毎に損出るなり。
是は商いを急ぎ、是非とも取る心にて致す故違うなり。
欲を離れ、天底を見定め、上げならば上げ、下げならば下げと、立場を極め、三位の伝に引き合わせ、売りなり、買いなりと立て抜くべし。
意訳
相場の局面に対して、確固たる考えや立場がないと、欲に駆られ、相場の変化に釣られて弱気になって売り過ぎたり、しばらくして買い戻したりし、その度ごとに損を出すことになる。
これは、欲に駆られて相場を見、儲けようと売買を焦るから失敗することになる。
欲を捨て、冷静客観的に天底を見極めて、局面が上がり相場なのか、下がり相場なのか、大きな流れを大局的観点から判断し、売買しなければならない。
コメント
投資手法には、フローとディレクショナルの2つがあります。
フローはいわゆるデイトレードなどの短期売買で用いられ、上げ相場、下げ相場の流れに乗って、利ざやを稼ぐ手法です。
しかしフローは多くの人が失敗しており、ごく少数の天才(個人投資家のBNF氏など)だけが成功しています。
ディレクショナルはマクロ分析により、長期的な観点から投資する手法であり、宗久翁の手法も天井値段、底値段を見極めじっと待つ戦略ですから、ディレクショナルに分類できると考えます。
第48章 立場を崩すな
この商い三位の伝を以て、一体の上げ下げを見極め、二つの内、何ほどの下げ、何ほどまで上げ、何ほどにて止まる、その節、上方此の方作合いを考え、始終如何と丹念致し、たとえば買いにつく時は、その間の狂い高下に構いなく、立場を崩さず、しっかりとすべきなり。
思い入れ当たるときは、勘定のとおり取り留るものなり。
安きところにて買い、高きところにて売るべしと心掛けては、宜しからず。
上げと見込む時は、全体を考え、片買いと心得べし。
もし、また了見違うときは、早速売り返し休み、とくと米の動きを見るべし。
その節、米弱みに見ゆる故、売り過ごすことあり。はなはだ宜しからず。
是非下ぐべしと存じても売らざるものなり。
心得るべし。
意訳
天井底を見極め、全体の局面が上げ相場なのか、下げ相場なのか、そしてどこまで上がり、どこまで下がり、どこで止まるのかを多くの情報から慎重に判断し、買うと決めたら、そのときの相場の変化に構うことなく、買いの立場を堅く守り抜かなくてはならない。
判断が的中したら、当初予定した値段で利益を確定する。
欲を出して、底値で買い、天井で売ろうとすることが間違いのもとである。
大局が上げ相場と判断したら、買うことに徹しなければならない。
もし、その判断が間違っていたら、すぐに売り、しばらく休みなさい。
そしてその間、じっくりと相場を観察しなさい。
ただし、その際は、判断を間違えたからと言って、売り過ぎてはよくない。
天井底の見極めにおいては、大きな間違いはなく、買いの立場を堅く守りつつ、当面の局面に対処するだけなので、下げ相場だと思っても売ってはならない。
川島FPのつぶやき
宗久翁はよほどの「頑固親父」のようですが、透徹した相場観に裏打ちされた「ポリシー」を堅持することの大切さを述べたものと思います。
そし何より、欲張るなと繰り返し諭しています。
欲を離れ、自分の洞察力の正しさを検証することに大いなる意義を翁は見いだしているような気がします。
閑話休題
相場三昧伝は「立場の堅持」と「待つ」ことにより勝利を呼び込んでいますが、考えてみれば必勝の戦略としては当然のことだと思います。
なぜなら、米の価格は、永遠に上がり続けることはなく、下がり続けることもありません。
一定範囲の中で上下を繰り返しているだけです。
米相場とは、短期的この価格の変動について上げ相場、下げ相場を判断し投資をすることで、半分の人が儲け、半分の人が損しています。
株式投資のように全員が儲け、全員が損することはありません。
したがって、米相場を1~3年ぐらいの長期で考えると、その間じっくり待つことができれば、相場は必ず戻ってきますから、結果として100%勝つことができます。
ただし資金効率の点で回転率が悪くなったりします。